2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J00094
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
横川 和穂 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア / 市場経済化 / 地方財政 / プーチン政権 / 財政改革 / 地方自治制度 / 地方公共サービス / 政府間財政関係 |
Research Abstract |
市場移行期のロシアにおける地方財政について、本年度は2000年から2003年のプーチン政権第1期目に行われた諸改革が地方財政制度に及ぼした影響を考察した。ロシアの政府機構は連邦、連邦構成主体、地方自治体という三層から構成されるが、本研究ではこのうち最も住民に近い地方自治体レベルを対象としている。ロシアにおける地方自治制度や地方財政制度の整備は、ソ連崩壊後、1990年代の地方分権化過程に始まるが、本格的な改革が行われるのは2000年のプーチン政権発足以降のことである。したがって、本研究では、1990年代の問題点を踏まえた上で、2000年以降の地方財政改革がロシアの地方自治体財政に与えた影響を、多くの法的文書やロシア財務省の決算データなどの分析を通して考察した。 この間の改革は、政治的な面では地方自治体に対する上からの統制を強化する一方で、財政的な面では地方分権化を志向しており、一見矛盾する性格を持ったものとなった。財政面での改革を、2001年に制定された基本方針「ロシア連邦における2005年までの財政連邦主義発展プログラム」に沿って、政府間での事務配分、税源配分、政府間財源移転について具体的に考察した結果、「プログラム」の意図に反して、改革は自治体の税源拡充には結びつかず、むしろ上位の政府からの移転財源への依存が強まっていることが明らかになった。このことは政府間財源移転に占める特定補助金の増加を通して、自治体が供給する公共サービスのあり方にも影響を与えており、社会主義時代から引き継がれた安価な住民サービスの普遍的な供給は、財政的に維持困難な状況に追い込まれつつある。また、地方自治体の税収構造にも変化が見られ、地方レベルでの税負担のあり方が、企業を中心としたものから個人を中心としたものへシフトしつつあることも分かった。 プーチン政権第1期目の地方財政改革の特徴は、「プログラム」で目標とされたように、地方分権化によって地域間競争を促すことで効率化を実現するのではなく、政治的な統制を強化すると同時に財源の中央集中を進め、上からの改革によって地方財政の構造転換を図ろうとした点にある。そこにはまた、「プログラム」の方針とそれを具体化する諸改革との間のずれも存在していることが明らかになった。
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