2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J00137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 隆之 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近江国高島荘 / 近江国広瀬荘 / 環境史 / 地域史 / 摂津国長洲荘 / 平野将監入道 / 楠木正成 / 赤松円心 |
Research Abstract |
本研究の柱は、(1)守護論、(2)鎌倉幕府論、(3)荘園公領制論、の3つである。以下、研究計画に則しながら、今年度の成果について述べる。 論文「清水山城下の荘園-高島荘と広瀬荘-」では、近江国高島郡の安曇川下流域に立地した諸荘園に関する文献史料を整理し、摂関期以降、中央政界と現地の密接な連携で各荘園が漸次成立する様相や、院政期から鎌倉期に、各荘園が政治的・社会的状況や自然環境の変化のなか、荘園としての内実を変容させる過程を明らかにした。研究計画に則していえば、(2)鎌倉幕府論の前提をなす摂関期から院政期の中央・地方の相互関係を視野に入れつつ、(3)荘園公領制論のひとつの柱をなす立荘論に、環境史や地域史というまったく新しい視角からのアプローチを試みた成果、ということになる。 論文「摂津国長洲荘悪党と公武寺社」は、新出の「宝珠院文書」所収史料をもとに、鎌倉末期「悪党」の存在形態や公武寺社勢力との関係などに関する新知見を紹介し、当該期の政治・社会状況全般にかかわるいくつかの論点を提示した。なかでも今回、急浮上した異色の「悪党」平野将監入道は、楠木正成はおろか、赤松円心とも縁故を有していた形跡があり、両雄とならび、鎌倉末期の時代相を体現する人物である。研究計画とのかかわりからいえば、本稿は、(1)(2)(3)にまたがる諸問題を総合的に論じた成果といえる。 なお、その付論「守護代・使節・検断沙汰」では、同じく新史料から知られる鎌倉幕府の制度に関する新事実を分析、紹介し、(1)(2)を展開するための新材料を提示した。
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Research Products
(4 results)