2004 Fiscal Year Annual Research Report
台湾タイヤル族と日本人-植民地主義との向き合いかた
Project/Area Number |
04J00153
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 平 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 暴力 / 台湾タイヤル族 / 日本人 / 植民地主義 / 脱植民地化 / 資本主義 / 文化の詩学 / トランスポジション |
Research Abstract |
前期は米国カルフォルニア大学デイビス校にて、文化の詩学の実践を模索すべくネイティブアメリカンスタディーズのライティングセミナーに参加した。日本人としで並びに個人としての背景を振り返り、そのポジションからいかに台湾先住民族(タイヤル族)研究を実践してきたか、彼ら彼女らに出会ってきたのかを記述しようとした。植民地統治責任について、死者を含む現地の人々の声に耳を澄ますことから思考し、詳細な民族誌記述を遂行することにおいてこそ、太田好信氏の言うトランスポジションがわずかに浮かび上がってくるのではないかという確信を得た。 後期は大阪大学日本学研究室にて、博士論文「台湾タイヤル族と日本人」の序章となるべき報告を行った。植民地統治責任の記述を、資本主義と国家暴力を軸に記述する方向性を検討した。討論において浮上した問題が、暴力概念の設定であり、その記述の仕方とスタイルである。マイケル・タウシグがロジャー・ケースメントを受けて模索するような、写実主義的な暴力描写を通じて、脱植民地化運動の記述を思考している。また長原豊氏の講義「資本とその外囲」を聴講し、資本と国家、領土化と脱領土化について理論的考察を行った。 その後台湾(中華民国)桃園県にてフィールドワーク、資料収集に従事した。日本統治時代に対する歴史的解釈、戦後の白色テロの経験、保留地政策とそれに対する対応に関してオーラルなデータ、文献資料を集めた。「台湾先住民族の宗教」(朝倉書店『宗教の事典』原稿)の資料収集と執筆を同時に行った。
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