2006 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における民間宗教者組織の研究-陰陽道組織を中心に-
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04J00179
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
梅田 千尋 京都大学, 総合博物館, 特別研究員(PD)
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Keywords | 陰陽道 / 宗教史 / 本所 / 奈良 / 盲僧 / 興福寺 / 民間宗教者 / 中近世移行期 |
Research Abstract |
本年度の研究は、(1)宗教的儀礼としての近世陰陽道の実態と階層・地域による差異、(2)中近世移行期の奈良における寺社権門の近世本所への移行の実態、という大きく二つのテーマを中心に研究活動を行った。 (1)については、「近世陰陽道祭祀の性格-公家社会における陰陽道をめぐって」では、古代・中世の陰陽道史研究と比べて実証的な祭祀実態の研究に欠けていた近世の陰陽道儀礼をとりあげ、願主の階層や地域という背景を考慮して内容を比較した。結果、近世の公家社会における陰陽道は古代の宮廷陰陽道の流れを直接ひくものではなく、近世京都地域での習俗的信仰として理解しうる事を確認した。なお、「林淳著『近世陰陽道の研究』書評」では、東海・関東地方の事例を中心に編まれた著書を批評・検討し、畿内を中心とした自らの研究成果との相違点を明らかにした。 (2)については、中世には興福寺を中心とする巫女・神楽男・盲僧ら民間宗教芸能者の組織的編成が行われた奈良地方において、そうした中世の寺社権門による編成がどのように解体し、近世の全国的本所への包摂につながっていったのかを明らかにした。「興福寺大行事職考」では、複雑な興福寺寺内組織のなかでも、とくに春日若宮社拝殿運営と民間宗教者編成とを掌握した大行事職の存在を明らかにし、荘園経済衰退後の南都寺院において、大行事が果たした役割を分析した。そして、大行事職を通じた社辺の民間宗教者支配が興福寺に大きな経済的利益をもたらした可能性を指摘した。同時に、その経済構造が近世に転換するという見通しを示すことで、南都寺院の近世化についても論及した。また、「近世奈良の盲僧組織」では、興福寺支配下にあった地神経盲僧という宗教者集団の史料を分析し、その実態を明らかにした。地神経盲僧組織は、近世中期には集団としての独自性を維持できず消滅していったが、こうした動向を、盲人集団として拡大し、全国本所化した京都当道座と対比する事で、近世本所成立への歴史的経緯に関する新たな事例を提供した。
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Research Products
(4 results)