2004 Fiscal Year Annual Research Report
バッファーガス冷却と光トラップを用いた冷却分子の生成とその応用
Project/Area Number |
04J00185
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
榎本 勝成 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | バッファーガス冷却 / NH / 低温分子 |
Research Abstract |
本年度はハーバード大学のJ.Doyle教授の研究室に赴き、NH分子のバッファーガス冷却の実験に従事した。バッファーガス冷却とは1K程度のヘリウム気体中に原子分子を導入し、ヘリウム気体との衝突によりそれらの原子分子を冷却し、そのまま数Tの磁気トラップ中に捕捉する技術であり、当研究室はその研究分野をリードする存在である。当研究室ではこれまでにCaH分子の捕捉を実現させているが、その捕捉時間は数百msと短かった。このため最近は大幅な捕捉時間の改善が見込まれるNH分子の捕捉を目指している。 NH分子はアンモニアの分子ビームを直流放電にさらすことで得られる。この分子ビームを10^<16>cm^<-3>程度の密度のヘリウムガスと衝突させ、ヘリウムガスと同じ温度(>2K)に冷却する。本年度は本実験用のセルについて、この分子の導入法の確立・最適化を行った後、セルの周囲に設置した超伝導コイルを用いて、2種類の実験を行った。このコイルは最大4Tの磁場を生成することができるが、このコイルをヘルムホルツ型にして使用することで強磁場中のZeeman分裂の測定を行うことができる。強磁場中ではZeeman分裂は回転準位間のエネルギー差と同程度になり、分裂の様子は複雑になるが、得られた実験結果は複数の回転準位を含めた理論計算とよい一致を示すことを見た。また、アンチヘルムホルツ型のコイルは磁気トラップを生成するが、その磁場中で分光を行った場合、2Kと4Kでスペクトルに顕著な違いが現れることを見た。これは2Kでは熱エネルギーが磁気トラップの深さの半分以下になり、各Zeeman副準位間でNH分子の拡散時間に大きな違いが生じるために起こる。
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