2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J00189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河井 伸介 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 場の理論 / 弦理論 / 量子重力理論 / 宇宙論モデル / 可解模型 |
Research Abstract |
非自明な背景時空上における弦理論の研究は、初期宇宙やブラックホールといった対象について量子論的な考察を行う上で重要な手がかりを与えると考えられており、近年の理論高エネルギー物理学の主要なテーマの一つである。その基礎となる共形場理論を用いたD-ブレーンの研究において、本年度は主に二つのモデルについて研究を行った。 まず、Wess-Zumino-Witten模型、特にそのうち最も簡単なSU(2)のアフィン・リー対称性を持つ場合について、境界条件の新しい自由場表示を考案し、それとCoulomb-gasの方法を組み合わせることによってディスク上の相関関数の解析解を平易に導く方法を開発した(S.Hemming、E.Keski-Vakkuriとの共同研究)。この方法は一般のアフィン・リー代数の場合に容易に拡張することができ、またN=2超対称最小模型、パラフェルミオン等のcoset、またカラビ=ヤウ多様体の研究等への応用が考えられる、汎用性の高いものである。この研究結果は論文として発表されている。 次に、c=1オービフォールド模型の境界に対するマージナルな変形について解析を行い、時空オービフォールド上のブレーンの経時変化についての研究を行った(E.Keski-Vakkuri,R.Leigh,S.Nowlingとの共同研究)。具体的には時間の原点においた空間的ブレーンを宇宙の初期状態として考え、それが崩壊することによりミンコフスキー時空が始まるようなモデルを弦理論として考えることができることを示した。時空オービフォールドは弦理論で記述される最も簡単な時間変化をする時空の例であり、宇宙の初期特異点の単純化された模型を与えると考えられる。この結果に基づく論文を現在準備中である。
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