2004 Fiscal Year Annual Research Report
プレート境界物質の摩擦・変形・透水実験に基づく新しい海溝型地震発生モデルの構築
Project/Area Number |
04J00199
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣瀬 丈洋 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛇紋岩 / 摩擦特性 / 高温高圧変形実験 / 断層 / 脱水反応 / IODP |
Research Abstract |
本研究は,プレート境界における主要な含水鉱物であり,地震発生帯に広く分布していると考えられている蛇紋岩に焦点を当てて,室内変形・摩擦実験によって,海溝型巨大地震発生の解析に必要な基礎データ(剪断強度・摩擦係数・透水係数)を確立することを目的としている. 本年度は予定通り,平成16年4月〜9月の間スイス連邦工科大学に滞在して,脱水反応条件下における蛇紋岩の高温高圧ねじり摩擦実験を行った.予備的な実験の結果,蛇紋岩(リザダイト)は脱水反応が起こらない条件では,摩擦係数が約0.5で比較的安定したすべり挙動を示すのに対し,温度を上昇させて反応を促進させると,摩擦係数が通常の岩石摩擦に近い0.7となり,非常に不安定なすべり挙動に移行することが明らかとなった.このことは,従来考えられてきた脱水不安定(脱水反応によって過剰水圧がおこり岩石が破壊する現象)による海溝型地震の発生機構だけではなく,脱水反応によって形成される,カンラン石と滑石のすべり挙動が地震の解析をする上で必要不可欠であることを示している.本年度の実験によって,実験方法はほぼ確立できたので,平成17年度は実験データの蓄積と,すべり挙動を支配するメカニズムを微細構造の観察によって明らかにする予定である. また,平成16年11月〜平成17年1月の期間,国際海洋掘削プロジェクト(IODP Leg304)に乗船して,大西洋海嶺において天然の蛇紋岩の産状を調べた.その結果,海洋地殻が蛇紋化することによって,強度の弱い蛇紋岩部分に変形が集中し,断層を形成することがわかった.このことは,沈み込むプレート中の蛇紋岩岩体には多くの断層が存在し,それらが再動することによって一部の海溝型地震が起こっている可能性を示唆している.今後,掘削プロジェクトで得られた蛇紋岩試料を用いて,変形摩擦実験を行っていく予定である.
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