2005 Fiscal Year Annual Research Report
プレート境界物質の摩擦・変形・透水実験に基づく新しい海溝型地震発生モデルの構築
Project/Area Number |
04J00199
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣瀬 丈洋 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛇紋岩 / 摩擦 / 脱水反応 / 断層 / すべり軟化 |
Research Abstract |
本研究課題は,プレート境界地震発生帯に広く分布していると考えられている蛇紋岩に焦点をあて,室内変形・摩擦実験によって,海溝型巨大地震発生の解析に必要な基礎データ(剪断強度・摩擦係数・透水係数)を確立することを目的としている. 本年度は予定通り,平成16年7月〜9月の間スイス連邦工科大学に滞在して,脱水反応条件下におけるアンチゴライト蛇紋岩の低速摩擦実験(すべり速度<0.1mm/s)をおこなった.その結果,脱水反応が起こる約600℃から,不安定挙動がはじまり,透水率の低いサンプルでは非常に大きな強度低下が起こることが確認された.また,従来不安定挙動が起こらないとされてきた,排水条件下においても不安定なすべり挙動が起こることがわかった.この不安定挙動は,断層面上の局所的な高間隙水圧に起因すると考えられ,脱水反応に伴って変化する断層近傍の透水率の変化が断層のすべり挙動を支配することが明らかとなってきた. その後京都大学では,排水条件下で高速摩擦実験(すべり速度>1m/s)を行い,地震時の高速すべりに伴う摩擦発熱が蛇紋岩のすべり挙動に与える影響を調べた.実験および断層面の温度計算結果から,すべり開始とともに摩擦発熱によって脱水反応が起こり,断層の摩擦係数が0.9から0.15まで劇的に減少することが明らかとなった.この結果は,蛇紋岩岩体に地震によるクラックの伝播が到達した場合,摩擦発熱により脱水反応が誘発され,さらにクラック沿いにすべりが加速することを示唆している. 来年度は,補足実験を行いながら,これらの実験データがプレート境界地震の分布をうまく説明できることを検証していきたい.
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Research Products
(4 results)