2006 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDにおけるクォーク・グルーオン・レベルでのハドロン構造の研究
Project/Area Number |
04J00256
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
高橋 徹 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | カイラル対称性 / 対称性の自発的破れ / 有効質量 / 閉じ込め / QCD / 強い相互作用 |
Research Abstract |
ハドロンの系を支配する強い相互作用を、その基礎理論のSU(3)ゲージ理論であるQCDから直接理解すべく、格子QCD計算を行った。格子QCDは、強い相互作用に対する強力な第一原理計算としてその地位を確立している。 この研究の一環として、我々は、SU(3)ゲージ相互作用に従う、スカラー粒子の性質を調べた。本来は質量ゼロのクォークは強い相互作用の結果、カイラル対称性の自発的破れを引き起こし、数百MeVという大きな構成子的質量を獲得するのであるが、特別な対称性を持たないスカラー粒子を調べることにより、この質量獲得のメカニズムを理解するのが目的である。その結果、スカラー粒子も同様に、1GeV以上の大きな有効質量を獲得することを示した。これは、QCDの強結合性によりスカラー粒子がグルーオンの衣をまとい、その結果大きな質量を獲得したと考えられる。このようなことから、SU(3)ゲージ相互作用に従う粒子は、普遍的に、大きな有効質量を獲得すると予想している。 また、我々は、カイラル対称性の自発的破れのメカニズムを微視的に理解するために、(QCDと性質が似ている)compact QEDの系を調べた。その結果、カイラル対称性の自発的破れに直接関与するディラック演算子のゼロ固有値付近のモードは、真空中に存在するモノポールカレントと負の相関があることを示した。これは、カイラル対称性の破れにはモノポールの自由度が重要な役割を果たしていることを意味する。モノポールの自由度は、カラーの閉じ込めにも重要な役割を果たしており、「カイラル対称性の自発的破れ」「カラーの閉じ込め」の両者は密接に関係していることが予想される。
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Research Products
(1 results)