2006 Fiscal Year Annual Research Report
フィトクロムB分子のN末端/C末端領域間の機能分担の解析
Project/Area Number |
04J00335
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
松下 智直 京都大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フィトクロム / 光形態形成 / シグナル伝達 / 光生理学 / 細胞内局在 / 光受容体 |
Research Abstract |
植物の主要な光受容体であるフィトクロムB(phyB)分子は、発色団を結合し光受容に働くN末端領域と、二量体化に働くC末端領域の二つのドメインから成る。C末端領域にはキナーゼドメインやPASドメインなどシグナル伝達に関与すると思われるモチーフが存在するために、これまで長い間、phyB分子はc末端領域からシグナルを伝達すると信じられてきた。しかしながら、我々の最近の研究により、phyBがC末端領域からではなくN末端領域からシグナルを伝達することが明確に示され、フィトクロム分子の構造と機能に対するこれまでの考え方を改める必要が生じた。フィトクロム分子のN末端領域にはシグナル伝達や遺伝子発現制御に関与するような目立ったモチーフは存在せず、そのシグナル伝達機構は全く不明である。そこで我々は、遺伝学的解析を行い、phyB N末端領域内でシグナル発信に直接関与するアミノ酸残基の同定を試みた。その結果我々は、phyB分子の光受容能に全く影響を与えることなくシグナル伝達能のみを失わせるミスセンス変異を8個同定し、それらは興味深いことにN末端領域内の比較的小さな領域にホットスポットを形成した。この領域は、一部のバクテリオフィトクロムにおいて、タンパク質間相互作用に関与すると考えられるPASドメインとして認識されていることから、phyB分子がこの領域を介して下流因子と相互作用し、シグナルを伝達する可能性が示唆された。また最近、バクテリオフィトクロムであるDrCBDのN末端領域の結晶構造が解かれ(Wagner et al.2005)、phyBとDrCBDのアミノ酸配列の比較から、上述のphyBシグナル伝達に直接関与すると考えられる8つのアミノ酸残基のうちの多くが、DrCBDに見いだされた"light sensingknot"と呼ばれる非常に特殊な構造の近傍に位置することが示唆された。
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