2004 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病発症機序における細胞骨格系タンパク質Sept4の役割解明
Project/Area Number |
04J00358
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
猪原 匡史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | セプチン / セプチンリング / 輪状小体 / パーキンソン病 / 精子無力症 / 男性不妊 / Sept4 / αシヌクレイン |
Research Abstract |
1.Sept4遺伝子欠損マウス[Sept4(-)マウス]を作成し、パーキンソン病(PD)モデルマウスの一つである変異型ヒトαシヌクレイン(αS)(A53T)発現マウスと交配することにより、αS(A53T)/Sept4(-)マウスを作成した。本マウスの運動障害発現時期あるいは組織所見の検討を開始した。 2.Sept4(-)マウスが男性不妊であることを見出した。Sept4は正常精子の中片部と尾部の境界に見られる構造的支持体である輪状小体に局在しており、Sept4が欠損することで輪状小体は消失し、大部分の精子は中片部と尾部の間で屈曲し、正常な鞭毛運動を失っていた。輪状小体が消失したことで、中片部と尾部境界部の精子径が縮小し、モータータンパク質であるキネシンが同部位に蓄積しており、このことも精子運動を阻害する一因と考えられた。ヒトの精子無力症3例にも同様の輪状小体の消失例が見出されたことから、セプチンの男性不妊症への関わりが示唆された。 3.Sept4(-)マウスの精子先体反応が障害されていることを見出した。Sept4(-)マウスと、acrosin-GFP発現マウスを交配することでSept4(-)マウスの精子先体をGFPでラベルし、FACSを使用することで精子先体反応をreal-timeで観察した。Sept4(-)マウスではカルシウム流入で誘発される先体反応がほぼ消失しており、Sept4は精子先体での開口放出制御機構に関わっていると考えられた。 4.精子先体での開口放出機構はシナプスで起こる開口放出機構に類似する。Sept4(-)マウス13匹、野生型マウス11匹を用い行動実験を行ったところ、Sept4(-)マウスの脳内ドパミン神経伝達異常が示唆された。組織学的にはSept4(-)マウスの側坐核におけるドパミン神経終末密度が低下し、開口放出制御分子(t-SNAREの構成分子)であるSyntaxin1とmunc-18の発現量も同部位で低下していた。以上から、Sept4は神経終末におけるドパミン開口放出機構に関与することが示唆された。
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