2004 Fiscal Year Annual Research Report
コムギ耐病性物質環状ヒドロキサム酸類の発現機構の分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
04J00377
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 泰治 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環状ヒドロキサム酸類 / 生合成遺伝子 / コムギ / 倍数性 / ゲノム / 同祖遺伝子 |
Research Abstract |
6倍性植物であるパンコムギ(genomes AABBDD)は耐病性に関与する二次代謝化合物である環状ヒドロキサム酸(Hx)類を生成、蓄積する。これまでにHx生合成の5段階の反応を担う生合成遺伝子(TaBx1-TaBx5)をパンコムギから単離し、5種の遺伝子はパンコムギのA,B,Dの全ゲノムに座乗することを明らかにしている。本年度は、パンコムギのHx生合成にA,B,Dの各ゲノムがどのように寄与しているのかを明らかにすることを目的とした。 まず、これまでに得られているTaBx1-TaBx5 cDNAをプローブとしたパンコムギcDNAライブラリーのスクリーニングによって、TaBx1-TaBx5全てについてA,B,Dゲノムに由来する同祖遺伝子cDNAを3種ずつ単離した。同祖遺伝子間SNPsを利用することでゲノム(同祖遺伝子)特異的な定量RT-PCR系を確立し、遺伝子発現量のゲノム間差異を調べた。その結果、5種の生合成遺伝子の発現レベルはゲノム間で異なっており、その発現様式は植物の部位や生育時期によって異なることが明らかになった。 次に、TaBx1を大腸菌で、TaBx2-TaBx5を酵母でそれぞれ発現させ、TaBx1精製酵素およびTaBx2-TaBx5を発現しているミクロソーム画分を用いたカイネティクス分析によって酵素の触媒能をゲノム間で比較した。K_<cat>/K_m値に基づいた比較から、酵素の触媒能はゲノム間で異なることが分かった。また、酵素触媒能のゲノム間差異は遺伝子発現量のゲノム間差異と対応しておらず、遺伝子発現量が必ずしも各ゲノムのHx生合成への寄与度を表していないことが示唆された。遺伝子発現量と酵素触媒能のゲノム間差異を総合すると、パンコムギの茎葉部ではBゲノムがHx生合成に最も寄与していることが示唆された。
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