2006 Fiscal Year Annual Research Report
白色腐朽菌によるリグニン分解機構の解明 -電子スピン共鳴法による研究-
Project/Area Number |
04J00404
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
大橋 康典 京都大学, 生物圏研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 白色腐朽菌 / Ceriporiopsis subvermispora / リグニン / ペルオキシルラジカル / アルコキシルラジカル / カーボンセンターラジカル |
Research Abstract |
C.subvermisporaによる選択的リグニン分解には有機ヒドロペルオキシドを介するラジカル反応が関与しているが、その過程で生成するペルオキシルラジカル(PR)、アルコキシルラジカル(AR)、カーボンセンターラジカル(CR)の何れが分解に関与しているのかは明らかでない。昨年度までの研究により、CR、ARはLMC分解能を有する一方、PRはLMCを分解できないことが明らかになった。そこで、各種ラジカルとLMCとの反応に関するさらなる知見を得るために、少量の溶液で高速フローESR測定をおこなうことのできるdielectric mixing resonator (Bruker, ER4117D-MVT)を用いて、ラジカルとの反応直後に生成するLMC由来ラジカルを直接測定することを試みた。本実験では、LMCがどのようなラジカル種によって分解されうるのか、また、ラジカル種によるLMC攻撃部位が何処なのかを直接かつ同時に明らかにすることができる。 本実験では、以下に示す反応でラジカルを発生させ、それぞれのLMCとの反応性を調べた。また、LMCとしては水溶性に優れ、安価で大量使用の出来るベラトリルアルコール(VA)を用いた。 Ti^<3+>+HO-OH→Ti^<4+>+HO^・+OH^- Ti^<3+>+t-BuO-OH→Ti^<4+>+t+BuO^・+OH^- Ce^<4+>+HOO-H→Ce^<3+>+HOO^・+H^+ Ce^<4+>+t-BuOO-H→Ce^<3+>+t-BuOO^・+H^+ HO^・とVAとの反応で生成したラジカルのESRスペクトルは、Ce^<4+>による一電子引き抜きで生成したVA、^<・+>のものとは明らかに異なっていた。このラジカルは、VAのパラ位にHO^・が付加して生成したラジカルであると推測される。一方、t-BuOO^・およびHOO^・とVAとの反応は観察されなかった。t-BuO^・はVAと反応していることが推測されたが、生成するVA由来ラジカルを直接測定することはできなかった。本実験の結果は、ARはLMCと反応するがPRは反応しないという昨年までに得られた実験結果と矛盾しない。今後はVAよりも複雑なLMCを用いて同様の実験をおこない、ラジカル反応によるLMC分解の機構をESR測定によって明らかにしていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)