2004 Fiscal Year Annual Research Report
民衆教化における声と文字 -石門心学のメディア戦略-
Project/Area Number |
04J00490
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 秀晴 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 石門心学 / 石田梅岩 / 手島堵庵 / 心学道話 / 民衆教化 / メディア / 声 / 文字 |
Research Abstract |
(1)石門心学は門人組織を有すると同時に、組織外への教化に向けて出版活動を行なっていた。このことにより、門人組織内でのいわば秘伝的な教義がなし崩し的に出版ルートに乗せられていくことになる。こうした情勢についての報告を第6回「書物・出版と社会変容」研究会で行なった。(2)石門心学の門人組織は「創始者」石田梅岩の教義のもとに結集する。つまり、梅岩は弟子たちの顕彰によって創始者に「なる」のである。こうした梅岩学継承の動きについての史料を発掘し、その概要を石門心学会で報告した。なおここでの報告は、同会より授与された「石門心学研究奨励賞」の受賞記念報告である。(3)梅岩学継承の動きの中でもとりわけ手島堵庵の動向に注目することにより、「普遍的」な学問を説こうとした梅岩と、「庶民の学問」を説くことに自己限定していく手島堵庵との相違が明らかとなった。この点について、関西教育学会第56回大会で報告した。(4)(1)でも触れた如く、石門心学にもとずく民衆教化は出版活動に拠るところが大きい。ところが、これまでの研究では、心学道話と呼ばれる口頭による教化のみがクローズアップされてきた。そこで、心学書の刊行状況に関する調査を行い、可能な限り心学書を蒐集した。その結果明らかになったことは、心学の普及は石門の門人達の動向を追うだけでは説明できないということである。戯作者やほとんど無名の人物、さらには武士層が出版界に参入してくることによって心学は普及していく。また、これらの書物の普及の背景には、天明期頃の京都や江戸において、無名の人物による「心学」と銘打った講釈、道話が盛んに行われていた情勢があったことを明らかにした。
|
Research Products
(1 results)