Research Abstract |
大気エアロゾルのうち特に硫酸エアロゾルなどの吸湿性エアロゾルは,雲凝結核として働くことにより,雲粒径を減少させ,雲の寿命を延ばすことにより間接的に地球を冷却化する作用を持つと言われている(間接的寒冷化効果)が,その効果の信頼度は低い.2000年7月以来三宅島は,アジア全域の人為起源放出量に匹敵する硫酸エアロゾルを火山活動により大気中に放出してきた. 16年度は,雲・エアロゾルの動態を広域的に把握する為のツールとして数値モデルの開発に取り組み,その適用性及び三宅島火山の噴火事例を詳細に見るために,三宅島起源の硫酸エアロゾルによる様々な環境変化に関する研究を行った.その結果,動態把握にとどまり,寒冷化効果に踏み込むには至らなかったものの,これまで言われなかった新たな環境影響が明らかになった.火山性硫酸エアロゾルは,直接地表面に酸性沈着するのみならず,火山性の気塊においてアンモニア・硝酸・塩酸などのガス-エアロゾル分配が極端に変化させた.そして,それにより,非火山性(主に人為起源)の硝酸・塩酸などの二次的な環境酸性化を促した.また,その極端に酸性化されたエアロゾル中では硫酸イオンは硫酸水素イオンとして存在していた. 17年度は,エアロゾル増加に伴う雲物理過程を通した地球寒冷化効果を定量的に評価する為のツールとして,エアロゾル-雲の相互作用を粒子スペクトル法により計算する数値モデルを開発し,先行研究と定性的に一致する結果を確認した.また,中部山岳地帯における八方尾根酸性雨測定所での長期にわたる詳細な地上エアロゾル観測結果や,東アジアにおけるモニタリングデータ,ならびに衛星による雲粒半径の解析アルゴリズムなどの観測結果を収集した.今後これら観測結果と数値計算を併せた研究を行う事によって,同寒冷化効果の高精度評価につながる事が期待できる.
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