2005 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル対称な格子ゲージ理論の構成に関する理論的および数値的研究
Project/Area Number |
04J00626
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
深谷 英則 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 格子ゲージ理論 / カイラル対称性 / トポロジー / アドミッシビィティー条件 / オーバーラップフェルミオン |
Research Abstract |
格子ゲージ理論は、低エネルギーのハドロンのふるまいを記述するのに、非摂動的、第一原理的に計算する手法として有効である。しかし、本研究以前の研究では、低エネルギーのハドロンの重要な性質である、カイラル対称性を損なう手法で計算がなされていた。この手法は、計算結果に大きな系統誤差を与え、さらには、非現実的なO-モードの出現で、統計誤差をも増長させる。本研究の目的は、カイラル対称性を厳密に実現できる格子理論の作用を用いることで、これらの誤差を低減させ、信頼性の高い理論計算を実現させることである。具体的には、Ginsparg-Wilson関係式を満たすオーバーラップフェルミオン作用および、Luescher条件を満たすゲージ作用を用いて数値シミュレーションを行った。まず、オーバーラップフェルミオンを、その量子効果を無視するクエンチ近似のQCD計算に応用する研究では、クエンチカイラル摂動論の予言と非常によく一致する結果が得られ、パイ粒子の崩壊定数、カイラル凝縮を高精度で測定することに成功した。Luescher条件を満たすゲージ作用の研究では、この作用が持つ長所と短所を明らかにし、欠点とされる性質が、従来の手法に比べて遜色ないこと、長所として挙げられる位相幾何学的性質の保存が期待以上のものであることを示すことができた。これらの研究成果は、将来の大規模シミュレーションで行われる研究に大きく貢献できるものと考える。実際、本研究で用いられた手法は、2006年3月に開始された高エネルギー加速器研究機構のグループによる大規模シミュレーションで採用された。
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