2004 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギーと構造との時間分解観測による蛋白質折れたたみ過程の機構解明
Project/Area Number |
04J00769
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
馬殿 直樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛋白質折れたたみ / βシート / プラストシアニン / 過渡回折格子法 / 拡散係数 / ラベル化 / アポミオグロビン / 酸変性 |
Research Abstract |
代表的なβシート蛋白質であるアポプラストシアニン(アポPC)の巻き戻り過程を過渡回折格子(TG)法により測定した.アポPCを光解離性基の導入により変性させ,それをレーザーを用いて解離させることで他の手法では不可能な400nsという高時間分解で巻き戻りを開始できた.測定に用いたTG法は分子拡散係数を高時間分解能で測定できるため,吸収や円二色性では分からない,折れたたみ過程での蛋白質全体の構造変化や溶媒との相互作用変化を時間分解でモニターできる.その結果、まずアポPCは変性状態(D)から約270μsの体積収縮をへてより拡散の遅い中間状態(I)をとることがわかった.すなわち,Iではまだβシート形成が不完全であり多くの残基が溶媒と水素結合している.その後,Iから天然状態(N)へ約20msで巻きもどる.各状態の拡散係数は,D,I,N、についてそれぞれ0.8,0.6,1.1×10^<-10>m^2s^<-1>であった. また,蛋白質構造と拡散係数との相関を明らかにするため,ミオグロビンの酸変性過程における拡散係数変化を測定した.この際,これまで不可能であった低濃度の蛋白質でもその拡散係数を短時間で測定できる手法を,TG法と自発ラベル化剤(sulfo-HSAB)とを組み合わせることで実現した.この手法は簡便でありどんな蛋白質,DNAにも適用できた.ミオグロビンは酸により二状態的に変化することが円二色性測定で分かっている.測定の結果,変性状態の拡散係数は天然状態の約半分になることがわかった.またアポミオグロビンのpH4中間体の拡散係数も測定した.この中間体はpHジャンプによる巻き戻り中間体と構造が似ているため,巻き戻り中間体の特徴づけによく用いられる.本手法による測定の結果,この中間体はコンパクトであり溶媒との相互作用も弱いことが分かった.
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Research Products
(1 results)