2004 Fiscal Year Annual Research Report
環状混合原子価多核金属錯体の低次元集積化による分子デバイスの構築
Project/Area Number |
04J00819
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古川 修平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属錯体 / 酸化還元活性 / 磁性 / 結晶工学 |
Research Abstract |
金属-金属間結合を有する水車型ルテニウム二核錯体は、数ある金属-金属間結合を有する同種の二核錯体と比べても中性([Ru^<II>_2(O_2CR)_4])及び一電子酸化状態([Ru_2^<II, III>(O_2CR)_4]^+)の二つの酸化状態を構造的に安定に存在させることができ、非常に特徴的である。さらに、金属-金属間結合に由来する、π^*軌道とδ^*軌道が偶然にも縮退しており、中性状態では二つの不対電子が二重縮退したπ^*軌道に(S=1)及び一電子酸化状態では三つの不対電子が三重縮退したπ^*軌道及びδ^*軌道に存在し(S=3/2)、どちらの酸化状態でも常磁性を示す。 そこで本研究では二つの酸化状態での集合体に関する研究を展開するため、ルテニウム二核錯体を有機配位子で連結することにより、様々な次元性の集合体の合成を行った。得られた結果は次の2点に要約される。 1,一電子酸化体の二核錯体と連結配位子として、ピリミジン誘導体を用い、三つの一次元鎖構造を得ることに成功した。この誘導体に導入された置換基の効果で一次元鎖(一次構造)の形態が微妙に変化することによって、一次元鎖集積構造(二次構造)が制御されていることが明らかとなった。また、ルテニウム二核錯体間には強磁性的相互作用が観測され、これら錯体に一般的に見られる超交換相互作用のみならず、スピン分極機構による相互作用が寄与していることが示唆された。 2,中性錯体と三座配位子であるトリアジンにより、ハニカム構造を得ることに成功した。トリアジンのすべての窒素原子が金属に配位することは非常に珍しく、また常磁性金属ですべて連結されたのは初めての例である。磁性の詳細な解析の結果、二核錯体間には反強磁性的相互作用が働いていることが明らかとなった。この構造内になおいて二核錯体はハニカム構造の辺に位置しており、磁気的にはスピンフラストレーション系として注目されている"カゴメ格子構造"を有している事が明らかとなった。
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