2004 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制剤の体内動態と薬効の速度論的解析に基づく個別化投与設計法確立に関する研究
Project/Area Number |
04J00927
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
福土 将秀 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Tacrolimus / Cyclosporine / Calcineurin / Pharmacokinetics / Pharmacodynamics / Transplantation / Therapeutic Drug Monitoring |
Research Abstract |
タクロリムスやシクロスポリンは、末梢血リンパ球中のカルシニューリン活性を阻害することにより強力な免疫抑制効果を発揮し、臓器移植後の拒絶反応抑制剤として広く用いられている。本研究では、両薬剤の体内動態と薬効特性の相違を明らかにすることを目的に、Wistar系雄性ラットを用いて詳細な検討を行った。 各臓器中のカルシニューリン活性は、脳で最も高く、次いで脾臓、胸腺、精巣、腎臓、心臓の順であり、肝臓で最も低かった。また、1μMのタクロリムス及びシクロスポリン共存による阻害効果は、脳以外の臓器でシクロスポリンの方が有意に強いことが明らかになった。次に、タクロリムスまたはシクロスポリンを静脈内投与した後の薬物血中濃度と全血中カルシニューリン活性の関係について検討を行った。両薬剤を単回投与した場合、薬物血中濃度に対するカルシニューリン阻害には反時計回りの履歴特性が認められたが、反復投与した場合にその履歴は消失した。また、シクロスポリン反復投与後のカルシニューリン活性は血中濃度推移と対応して変化し、活性の回復はタクロリムスよりシクロスポリンの方が速いことが判明した。これらの結果に基づき、E_<max>モデルを用いて解析を行った結果、薬効コンパートメントを仮定することにより、両薬剤投与後の全血中カルシニューリン活性の経時変化を良く再現することが出来た。 本検討結果は、カルシニューリンに対するタクロリムスとシクロスポリンの薬効特性が異なることを初めて明らかにしたものであり、薬効の発現並びに消失過程に関わる制御因子、または律速因子を同定することによって、薬効の個体間変動要因の解明へと発展出来ると考えられる。今後、生体肝移植患者を対象に母集団速度論的解析を行うことによって、ポピュレーションファーマコダイナミックスモデルを構築し、有効血中濃度域及びカルシニューリン活性域を明らかにし、免疫抑制剤の個別化投与設計法の確立を目指す。
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Research Products
(1 results)