2005 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制剤の体内動態と薬効の速度論的解析に基づく個別化投与設計法確立に関する研究
Project/Area Number |
04J00927
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
福土 将秀 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 薬物動態学 / 薬力学 / 薬物治療モニタリング / タクロリムス / シクロスポリン / カルシニューリン / 移植 |
Research Abstract |
タクロリムスやシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害剤は、移植後の拒絶反応抑制剤として汎用されているが、薬効の個体差を含め不明な点が多い。本研究では、臓器移植患者におけるカルシニューリン阻害剤の個別化投与設計法の確立を目的として、薬効について母集団速度論的解析を行い、薬効パラメータの算出を試みた。また、生体肝移植後のシクロスポリン至適投与法についても検討した。 生体肝移植患者を対象に、タクロリムスまたはシクロスポリンの血中濃度と末梢血単核球中のカルシニューリン活性のデータをE_<max>モデルに当てはめ、非線形混合効果モデルプログラムNONMEMを用い解析した結果、両薬剤のカルシニューリン阻害特性が異なることを移植患者において初めて明らかにした。シクロスポリンのEC_<50>値は200ng/mLと推定され、約700ng/mL以上の血中濃度において、カルシニューリン活性はほぼ完全に抑制されることが判明した。一方、タクロリムスのEC_<50>値は26.4ng/mLと推定され、治療域の上限とされる20ng/mL以上の濃度においても、活性は部分的にしか阻害されないことが明らかとなった。腎機能障害は両薬剤の高濃度のトラフ値と有意に相関することが判明した。さらに、カルシニューリン活性に大きな個体間変動が認められ、急性拒絶反応と上昇したカルシニューリン活性の間に関連が認められた。また、シクロスポリン1日1回投与法を用いた免疫抑制導入療法は、生体肝移植後早期のシクロスポリンの吸収プロファイルを改善し、カルシニューリン阻害効果を損なうことなく腎臓への負担を軽減することが示唆された。 以上、当初の目標を概ね達成することができた。本研究成果は、カルシニューリン阻害剤の至適モニタリング法や最適投与法に関する科学的根拠を提供するものであり、上記の検討で構築したタクロリムスの母集団薬効モデルと従来の母集団薬物動態モデルを連結することによって、個別化免疫抑制療法へと発展できると考えられる。
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Research Products
(3 results)