2004 Fiscal Year Annual Research Report
ハダニ類における表現型の可塑性が捕食回避戦略に果たす役割
Project/Area Number |
04J00972
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥 圭子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 寄主選好性 / カンザワハダニ / ケナガカブリダニ / 産卵場所選択 / 捕食回避 |
Research Abstract |
母性効果が捕食回避に果たす役割について、カンザワハダニ♀成虫の寄主植物選好性および捕食者存在時の♀成虫の産卵場所変化を調べた。 ハダニは植物を餌とし、植物の葉面上に生息する。異なる植物種に対するカンザワハダニ♀成虫の寄主選好性に植物の質と葉面構造が影響するかどうか、野生植物11種を使って調べた。ハダニの寄主選好性は植物葉片に対する定着性を指標とした。ハダニの定着性は植物葉面の毛の密度と毛の高さに影響されたが、植物の質には影響されなかった。ハダニは寄主植物葉面上に網を張り巡らし、捕食者のケナガカブリダニが居ると網の上に待避する行動をとることがこれまでの研究で明らかになっている。植物葉面の毛とハダニの捕食回避との関係を調べるため、毛密度と高さの異なる近縁なモデル植物としてインゲンマメとリママメを用いた。リママメの毛の方が低く少なかった。カブリダニが居ると、リママメ葉上のハダニの方がインゲン葉上の個体よりも多く分散した。また、インゲンとリママメは質的に同等であるにも関わらず、カブリダニが居るとリママメ葉上のハダニの(捕食卵数ではなく)産卵数がインゲン葉上よりも少なくなった。これは、リママメ葉上ではハダニ♀成虫が捕食回避により大きなコスト(非致死的間接効果)を払うことを示唆する。以上のことからハダニが毛深い植物葉によく定着するのは、その方が立体的な網を維持して捕食回避できるためと考えられた。 捕食者が居ないとハダニ♀成虫は主に葉上に卵を産むが、捕食者が居るとハダニ♀成虫は葉上だけでなく網状にも産卵するようになった。葉上の卵と網上の卵の捕食率を比較すると、網上の卵は捕食者に見つかりにくいことがわかった。この♀成虫の行動が子のためなのかは今後検討する。
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