2005 Fiscal Year Annual Research Report
ハダニ類における表現型の可塑性が捕食回避戦略に果たす役割
Project/Area Number |
04J00972
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥 圭子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カンザワハダニ / ケナガカブリダニ / 捕食回避 / 生息場所 |
Research Abstract |
表現型の可塑性が捕食回避に果たす役割について、昨年度に引き続きカンザワハダニ♀成虫の寄主植物利用を調べた。ハダニは寄主植物の葉面の毛を足場にして立体的な網を張り巡らす。ハダニは毛深い植物によく定着する一方、毛深くない植物にも利用する。葉面に毛の少ないヒルガオやヤブガラシではハダニは平らな葉よりも曲がった葉に多かった。また、ハダニを接種した葉は接種しなかった葉に比べてよく曲がった。このことからハダニが寄主植物の葉を曲げることが確かめられた。次にハダニが葉を曲げることの利点を調べるため、毛の少ないリママメの平な葉片と人工的に曲げた葉片にハダニを導入した。捕食者のケナガカブリダニが居ない場合に両者の産卵数に違いはなかったが、カブリダニが居るとハダニの産卵数は減り(非致死的間接効果)、その程度は平らな葉よりも曲がった葉の方が小さかった。この違いは以下のメカニズムによって生じると考えられた。カブリダニが居るとハダニは網上に待避し、網上に多く産卵する。曲がった葉では、毛深い植物葉での場合と同様にハダニは立体的な網を張って捕食回避し、そこで産卵できる。そのため、曲がった葉ではカブリダニによるハダニへの非致死的間接効果が小さくなると考えられた。ハダニは生まれたコロニーで成虫になるまで生活する。したがって、ハダニ♀成虫が葉を曲げることは子の捕食回避にも役立つと思われる。 また、ハダニはなぜ群れるのか、捕食回避の視点から検証した。前述のようにハダニ♀成虫がカブリダニと1対1で対峙するとハダニは捕食回避行動をとり、ハダニは産卵数が少なくなる非致死的間接効果を被る。ハダニの数を1匹から3匹に増やしたところ、ハダニ1匹当たりにかかる間接効果は小さくなった。しかし、捕食者が居る時のハダニの集合性は捕食者の居ないときに比べ低く、群れることが捕食回避となるかは明らかにならなかった。
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Research Products
(3 results)