2004 Fiscal Year Annual Research Report
寿命とストレス耐性を制御するシグナル伝達の分子機構の解明
Project/Area Number |
04J00993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大隈 貞嗣 京都大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | C.elegans / 老化 / インスリン / IGF-1シグナル伝達経路 / DAF-16 / 6-OHDA / 神経変性 / βカロテン |
Research Abstract |
線虫C.elegansにおける寿命制御の分子メカニズムについて、インスリン/IGF-1シグナル伝達経路および転写因子DAF-16に着目して解析を行なっている。今年度においては大きく二つの成果が得られた。まず、C.elegansにおいてインスリン/IGF-1シグナル伝達経路が神経変性を誘導する薬剤6-OHDA(6-hydroxyldopamine)に対する耐性を制御していることを見い出した。6-OHDAは主にラットにおいてパーキンソン病モデル病態を誘導する際に用いられる薬剤で、ドーパミン性神経に変性を起こし、脱落させることが知られている。これをC.elegansの野生型および長寿、高ストレス耐性の変異体に用いたところ、野生型において感覚神経の変性が観察されたのに対し、daf-2などの長寿変異体はこれに顕著な耐性を示した。また、転写因子DAF-16の下流で発現を制御されていると考えられるレセプター分子ccr-1が6-OHDA耐性を正に制御していることを明らかにした。さらに、DAF-16の下流因子の一つであるβカロテンモノオキシゲナーゼオーソログ遺伝子bml-1を新たに見い出し、これがC.elegansの寿命を正に制御していることを明らかにした。また、βカロテンの接触によってもbml-1の発現が誘導され、寿命が延長されることを見い出した。この寿命延長にはdaf-16が必要であり、またdaf-16の発現にはbml-1が必要であることがRNAiを用いた解析で明らかになった。このように、当研究はC.elegansを用いたインスリン/IGF-1シグナル伝達経路の解析によって、老化や疾患、代謝における様々な要素の関連について明らかにしつつある。これらの成果はいずれも現在投稿準備中である。
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