2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J01036
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
嶋田 珠巳 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アイルランド英語(Hiberno-English) / 文法記述 / クレオール / 言語とアイデンティティ / 話者意識 / 言語変化 / It is~'Tis...構文 / DO BE形式 |
Research Abstract |
本年度の研究内容は、(1)アイルランド英語(Hiberno-English)の文法諸特徴の把握と自らのテキスト・コーパスの作成、(2)一文法特徴であるDO BE形式についてのフィールド調査および当該文法記述の着手、(3)現代アイルランド英語の変化に関する考察、(4)昨年度までに分析を行ったIt is 〜 'Tis...構文についての記述のまとめとクレオール的性質の観点からの考察、(5)言語と民族的アイデンティティについての考察に概ねまとめられる。 上記(5)に関しては、本年度2月、米国ジョージタウン大学における学会The Language and Identity Tapestry : Linguistic Re/presentations and Identities in Social Interactionにて、Ethnic identity as vitality in language : A study of ‘Irishness'in Hiberno-Englishの題目のもとで研究発表を行った。言語意識に関するアンケート調査とフィールド調査に基づくアイルランドの事例研究から、アイルランド語が日常言語として話されていない現代にあっても民族的アイデンティティは衰退しているとは言えないことを指摘した。アイルランド英語が民族的独自性を表出する機能(identifier of ethnicity)を果たしうる可能性を言語学的分析によって示し、当該言語コミュニティの話者にアイルランド的であると意識(awareness of ‘Irishness')される言語特徴の使用を通してアイデンティティが言語に働きかけることを示唆しつつ、言語とアイデンティティの双方向的な関係性について述べた。 上記(4)に関しては2005年6月ライプツィヒに於いて行われる学会Creole Language Structure between Substrates and SuperstratesおよびエジンバラのThe First International Conference on the Linguistics of Contemporary English、さらに(2)〜(4)に関しては2005年7月カーディフの学会Language and Global Communicationにおいて研究発表の予定である。 本年度は、とくに近年急速に衰退しているDO BE形式の調査から、その衰退、あるいは形式と機能の対応関係に変化をもたらす要因として言語話者の意識(awareness of ‘Irishness'とawareness of ‘Standard')を見出し、その社会言語学的基礎づけを行った。クレオールとしてのアイルランド英語の特質について、具体的な文法特徴であるIt is 〜 'Tis...およびDO BE形式を通して考察した。
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