2004 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児の心的理解における養育者のmind-mindednessの役割:縦断的検討
Project/Area Number |
04J01044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 郁子 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | mind-mindedness / 心的理解の発達 / 母子相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、子どもとの具体的な関わり方に一定のバイアスを与え、それを通じて子どもの心的理解の発達を促進(あるいは阻害)する可能性が論じられている養育者のmind-mindedness(以下、MM)に注目し、その機能を乳児期から幼児期に亘り縦断的に検討しようとするものである。 MMとは、乳児を既に成人と同様に心的世界を有した存在であるとみなし、心的観点から子どもに関わろうとする傾向のことであるが、養育者間においてもこの傾向に個人差が存在することが指摘されている(Meins,1997)。そこで、未だ実証的試みは開始されたばかりと言えるMMの個人差測定について、独自にビデオ実験を案出し、6ヶ月齢児の母親を対象に測定を実施した。共通の乳児刺激に対する心的帰属について回答を得たところ、心的帰属の回数あるいは帰属する具体的内容には、実際に幅広い個人差が存在することが認められた。また、測定された母親のMM個人差の規定因について質問紙調査を実施し、母親の特性要因あるいは環境要因との関連についても基礎的知見を得た。 次に、測定されたMM個人差と実際の子どもへの関わり方との関連について、母子相互作用場面の観察を実施した。子が6ヶ月齢時の観察結果からは、実験で測定されたMMが高い母親は子の内的状態に対する自発的な言及数が多いことが見出された。また、MMが高い母親は子と同じ対象に母親が注意を注ぐ「注意追従型」の関わりをより頻繁に行っていた。子が9ヶ月齢時の観察からは、6ヶ月時と同様にMMの高さと子の内的状態への言及頻度の多さに有意な関連が認められた。 さらに、子どもの心的理解能力に関するコンピテンスとして他者の指さし理解について実験を実施した結果、母親のMMの内容面に現れる個人差と子どものコンピテンスに関連が認められた。これら一連の実験、観察調査により、乳児期においてMMが果たす子どもの心的理解の促進的機能について、実証的知見が得られたと言えよう。
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Research Products
(1 results)