2004 Fiscal Year Annual Research Report
多文化社会における教養教育に関しての理論的考察:教養教育論の日米比較
Project/Area Number |
04J01047
|
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
中村 夕衣 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 教養教育 / 多文化社会 / 多文化主義 / 高大連携 / アドバンスト・プレイスメント |
Research Abstract |
本研究は、多文化社会における教養教育の理論についての考察を目的としたものである。多文化社会という時代状況にあって、日本でも従来の教養教育論への反省が加えられているが、日本での研究は十分に進められているとは言い難い。そこで、教養教育についての議論が豊富なアメリカを参照することで、「多文化社会」を前提にした場合、教養教育はどのような理念をもつべきか、「単一文化状況」とよばれる以前の状況とどのような点が異なるのか、などの問いを考察している。 本年度は主に基礎的な研究に取り組んだ。六月に行われた日本比較教育学会では、『アメリカの教養教育論における多文化主義の波紋-アラン・ブルーム以後のliberal education論-』と題して、1980年代後半以降のアメリカの教養教育論における代表的な論者(A.ブルーム、R.ローティ、M.ヌスバウムなど)の議論を取り上げ、それらの論者が「多文化社会」という時代状況を前提に、いかなる形で教養教育の理念を提示しているのかを考察した。 また、アメリカにおける教養教育の理念が、具体的な教育機関のなかにおいて、どのように継承されてきたのかについての考察を行った。そこで取り上げたのは、プレップ・スクールといわれる私学の中等教育機関と私学の大学との連携についてである。ここで明らかになったことは、(1)教養教育が単に大学教育の理念としてではなく、中等教育の後期からすでに取り組まれるべき理念とされてきたこと(2)こうした理念を両教育段階で共有することが高大連携を可能とし、例えばアドバンスト・プレイスメントなどの政策が提案される基盤のひとつになっているということである。この結果は『アドバンスト・プレイスメントの起源における教養教育の理念 -高大連携がもたらしたアメリカの促進教育』の論文にまとめた。
|
Research Products
(1 results)