2005 Fiscal Year Annual Research Report
語彙獲得のニューラルネットワークモデルの構築と背景メカニズムの推定
Project/Area Number |
04J01081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森藤 大地 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニューラルネットワー / 言語発達 / 統語獲得 / 意味獲得 / 自己組織化 / 統計的学習 |
Research Abstract |
提示される単語系列内に含まれる規則の獲得順序についてニューラルネットワークを用いて検討した.具体的には,名詞や動詞などの語彙範疇の識別,自動詞・他動詞といった他動性の識別,主語と述語の数の一致(単数形主語には単数形述語)による数の識別の獲得順序を調べた.結果から,語彙範疇の識別がもっとも早く,次に他動性の識別,最後に数の識別が獲得されることが示された.この結果からネットワークは,「名詞」や「動詞」といった語彙範疇というおおまかな情報から獲得し,徐々に「単数の名詞」「単数の動詞」といった微細な情報を扱うようになることが示唆された. 次に,提示される具体的な単語系列から抽象的な統語知識を獲得するための機能をより詳細に検討した.提案したネットワークを学習した結果,単語の用法の類似度が高いときのみ同一のカテゴリとして判定する条件および,低くても同一のカテゴリとして判定する条件の両方で学習に失敗した.これらの条件では,用法の規則性を抽出する能力,または用法の類似度からカテゴリを構築する能力のどちらか一方しか見られなかった.しかし,高くも低くもない中間の類似度のときに同一のカテゴリとして判断する条件では,ネットワークは規則抽出とカテゴリ構築の両方の能力を示した.また,この条件でのみ,訓練で用いた単語だけでなく,新奇な単語に対しても文脈から適切なカテゴリを推定し,推定したカテゴリから適切に次の単語を予測するよう学習することができた.新奇な単語から次の単語を予測することは,単に訓練された単語系列に対して学習するだけでなく,獲得した規則や関係性を汎化適用する能力が求められる.この結果から,適切な範囲の用法の類似度に基づいて単語をカテゴリとして組織化することが,カテゴリ構築と規則抽出という2つの能力を実現し,これら2つの能力が統語獲得に関与することが示唆された.
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