2005 Fiscal Year Annual Research Report
行列模型による超弦理論の構成的定式化と非摂動ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
04J01122
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
花田 政範 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超弦理論 / 超対称性 / 行列模型 / 非臨界弦 |
Research Abstract |
本研究の目標は行列模型を用いて超弦理論の構成的定式化をする事である。今年度は、主に次の3つの研究を行なった:(1)IIB行列模型の局所ローレンツ対称性が明白な新解釈の導入、(2)超重力理論の超対称行列模型への埋め込み、(3)複素行列模型を用いた低次元の弦理論の記述可能性の追求。以下、これらを順に解説する。 (1)IIB行列模型の局所ローレンツ対称性が明白な新解釈の導入 IIB行列模型の難点として、一般座標変換不変性及び局所ローレンツ不変性が明確でなく、曲がった時空の記述が難しいという問題があった。我々は昨年度の研究でこの問題点を解消するようなIIB行列模型の拡張を与えたが、その構造が実は再びIIB行列模型そのものに埋め込めることが明らかになった。また、行列模型の運動方程式から真空中のアインシュタイン方程式を導くことにも成功した。この研究により、行列模型が背景非依存な重力理論の定式化になっている可能性が見出された。この結果はProg.Theor.Phys.114:1295-1316,2005に掲載された。 (2)超重力理論の超対称行列模型への埋め込み 上述の研究を拡張し、超対称行列模型のゲージ変換に局所超対称変換が埋め込め、運動方程式はアインシュタイン方程式とラリタ・シュヴィンガー方程式を充分条件として含むことを示した。この結果はプレプリントhep-th/0602210にまとめられ、現在雑誌投稿中である。 (3)複素行列模型を用いた低次元の弦理論の記述可能性の追求 低次元の弦理論を記述する模型の候補として、ワインガルテン模型を改良した模型を提案し、その相構造を数値的に解析した。この模型は非常に豊富な相構造を持つことが明らかになったが、弦理論としての連続極限を取れる領域は見つからなかった。しかし、副産物として、一点上のU(N)ゲージ理論のこれまでに知られていなかった複数の相転移を発見した。この相転移は、IIB行列模型における並進対称性の自発的破れと関連して非常に興味深いものであることが分かった。この結果は近日中に論文にまとめられる予定である。
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