2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学に基づくカーボンナノチューブの機械的特性および電気的特性の解析
Project/Area Number |
04J01154
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Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
久島 祥嘉 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銅ナノワイヤ / 第一原理計算 / 引張り / 理想強度 / 低次元構造材料 / 微小構造体 / 破壊 |
Research Abstract |
ナノスケールの微小構造材料としてのカーボンナノチューブ(CNT)の物理特性をより深く理解するためにCNTと同じ一次元ナノ構造材料である銅ナノワイヤの強度特性評価を行った.CNTが炭素の共有結合からなる一次元のチューブ状の構造を持つのに対して,銅ナノワイヤは金属結合を有する円筒状の構造をしている.解析には中心部に原子鎖を持ち,その周りに銅単結晶中の(111)層を巻きつけたmulti-shellタイプのナノワイヤを用いた.直径の異なる2種類のワイヤに対して軸方向に引張り変形を加えその強度を第一原理計算により厳密に評価した.また,銅ナノワイヤの構成要素である原子鎖および原子シートに関しても同様の計算を行い結果を比較した.銅ナノワイヤの強度はその構成要素である原子鎖,シートと比較して低く,直径が大きいワイヤほど強度が小さくなった.銅ナノワイヤの強度低下の原因には3つの要因が考えられる.(a)原子鎖とシートを結合することにより引張り方向に対する結合が弱くなる.(b)ワイヤでは表面から局所的にボンドの切断が生じ破壊に至る.(c)ワイヤの原子層どうしのミスマッチにより表面にわずかに電子密度分布の少ない場所が生じる.銅ナノワイヤが原子鎖,シートと比較して強度が低い原因は(a),(b)によるものである.直径が大きいワイヤで強度が低くなるのは(a),(b)の要因に加えて(c)により表面から破壊が起こりやすくなることに起因する.電子の移動,原子層どうしの相互作用による強度の変化は共有結合を有するCNTでは観察されなかった.同じ一次元構造体でもその結合形態の違いにより強度特性に大きな違いが現れることがわかる.
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Research Products
(1 results)