2006 Fiscal Year Annual Research Report
精密ラジカル重合による核機能化ミクロゲル星型ポリマー:ナノ反応場の構築と機能
Project/Area Number |
04J01205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺島 崇矢 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リビング重合 / ラジカル重合 / 遷移金属錯体 / 星型ポリマー / ミクロゲル / 水素化反応 / 高分子触媒 / ラジカル付加 |
Research Abstract |
1.リビングラジカル重合による核機能化ミクロゲル星型ポリマーの合成 申請者らは、これまでに星型ポリマーの機能化研究過程で、Ru重合触媒が末端ハロゲンの直接水素化に有効であることを見出した(下記3)。そこで、これまでに引き続き、Ru錯体を用いたリビングラジカル重合により、ジフェニルスチリルホスフィン(配位子モノマー)存在下、リビングポリメチルメタクリレート(枝ポリマー)をジビニル化合物で結合することにより、ミクロゲル核に重合触媒であるRu錯体を直接導入した金属含有ミクロゲル星型ポリマーを合成した。さらに、核内に残存するポリマー末端ハロゲン及び未反応オレフィンを、核内Ru錯体により連続的に水素化した。このポリマーの核内Ruを水溶性トリスヒドロキシメチルホスフィンにより除去し(97%以上)、多数のホスフィン配位子をミクロゲル核に有し(金属を含まない)、かつ水素化された「空孔型」星型ポリマーを合成した。さらに、このミクロゲル核に鉄やニッケルなどの別種金属錯体を導入し、種々の金属を核に有する新規金属含有ミクロゲル星型ポリマーも合成可能となった。 2.ミクロゲル核によるナノ反応場の構築と機能の創出 上記により合成した星型ポリマーの機能評価を行った。ホスフィン配位子をミクロゲル核に有する星型ポリマーに臭化鉄(FeBr2:トルエンに不溶の黄色固体)を組み合わせ、トルエン中80℃で攪拌し、in-situで鉄錯体含有星型ポリマーを合成した(黄色溶液)。この星型ポリマーを、四塩化炭素とメチルメタクリレートのラジカル付加反応触媒として用いたところ、速やかに付加反応が進行した。さらに、トルエン/水混合溶媒中においても、鉄錯体含有星型ポリマーは、核内鉄錯体を水和から保護し、水系ラジカル付加反応触媒として機能した。以上から、鉄錯体含有ミクロゲル星型ポリマーが、ラジカル反応に対して高い触媒活性や安定性を有することが分かった。 3,選択的水素化反応の開発 これらの研究の過程で,重合触媒に用いている塩化ルテニウム錯体に2-プロパノール(水素源)と炭酸カリウム(塩基)とを作用させると,リビング重合で生成したハロゲン末端が選択的かつ簡便に水素化されることを見出した。この反応では,反応系中でルテニウムヒドリドが生成し,これによって水素化が進行することも確認した。ラジカル重合で生成するハロゲンの水素化には,従来取り扱いが困難で有害なスズ化合物などが多用されてきたが,本研究で見出した方法は,これらにより遙かに安全で簡便であり,今後の波及効果が期待される。
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