2005 Fiscal Year Annual Research Report
外因性内分泌撹乱物質の胎盤毒性の評価法創出のためのオーファン受容体の役割の解明
Project/Area Number |
04J01276
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今西 哲 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ビスフェノールA / 胎盤 / 卵黄嚢 / GPRC5B / オーファン受容体 / 血管新生 |
Research Abstract |
これまでの研究からオーファン受容体GPRC5Bの卵黄嚢での発現がビスフェノールAの毒性の指標になりうると思われたので、GPRC5Bの機能の解明を目指した。妊娠13.5日目の胎盤では、血管内皮細胞にGPRC5Bの顕著な発現をみとめたが、その発現は15.5日には減少し、17.5日にはほとんど見られなくなった。また栄養膜グリコーゲン細胞にも発現が見られたが、この発現には日齢に伴う変化は見られなかった。レチノイン酸受容体RARαも血管内皮細胞に局在し、GPRC5Bと同様の変化を示した。一方で栄養膜グリコーゲン細胞には発現が見られなかった。卵黄嚢では、GPRC5B、RARαはともに血管内皮細胞と臓側中胚葉細胞に局在し、日齢に伴う変化は見られなかった。レチノイン酸とRARαが血管新生に重要な役割を果たすことは既に知られており、これらの結果はレチノイン酸による血管新生の調節にGPRC5Bが関与していることを示唆していると考えられた。そこで、血管新生の調節に中心的な役割をはたす、Angiopoietin-1 (Ang-1)、Ang-2、Tie2の発現を調べた。Ang-1とAng-2はともにTie2のリガンドであるが、Ang-1は血管新生を抑制し、Ang-2は促進する。妊娠13.5日目の胎盤ではAng-1は合胞体栄養膜細胞に、Ang-2は単核性栄養膜細胞に、Tie2は血管内皮細胞に局在していた。Ang-1、Ang-2は15.5日目、17.5日目と慚減した。Tie2はGPRC5B、RARαと同様の変化を示した。卵黄嚢では、Ang-2は臓側内胚葉細胞に、Tie2は血管内皮細胞に局在していた。Ang-1はタンパク質レベルでは検出されなかった。Ang-1のmRNAは日齢とともに減少した。Tie2のmRNAは妊娠15.5日目に増加し、17.5日目にもそのレベルを維持していた。胎盤、卵黄嚢におけるAngiopoietin/Tie2の発現パターンは胎盤の血管新生が妊娠17.5日目までにほぼ終了することと、卵黄嚢の血管新生はむしろ促進されることを示している。GPRC5B、RARαの発現パターンはこの血管新生の変化とよく一致しており、GPRC5Bがレチノイン酸による血管新生の調節に関与しているという仮説を支持するものと考えられる。以上について、3報の論文を投稿準備中である。
|