2004 Fiscal Year Annual Research Report
事故・故障時にパイロットの操縦を支援する飛行制御系の構築
Project/Area Number |
04J01398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 恵理 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 操縦分析 / パイロット / ニューラルネットワーク / フィードフォワード / フィードバック / 内部モデル / 非線形モデル |
Research Abstract |
パイロットの操縦特性を把握するために、パイロットを線形モデルとして表現し、操縦分析を行った研究が数多く発表されている。しかし、実際のパイロットの操縦には非線形性が含まれることが指摘されており、パイロットの操縦を線形モデルとして近似し、操縦を分析することが適切であるか議論の余地がある。そこで本研究は、さまざまな操縦対象について航空機のピッチ角操縦を模擬したシミュレータ実験を行い、得られた操縦データを対象に、操縦の非線形分析を実施した。 本研究では、ニューラルネットワークを利用し、視覚情報を感知してマニュアル操縦を行う操縦者を、フィードフォワード操作とフィードバック操作に対応する2つの内部モデルから構成される非線形モデルとして表現した。次に、シミュレータ実験から得た操縦データより2つの内部モデルを同定した。そして、構築した内部モデルについてシミュレーションを行った。得られた時間履歴とFFT解析結果より、熟練した操縦者のフィードバック操作には無視できない非線形成分が含まれることがわかった。操縦を行う際、生理的限界(視覚情報を感知する際の遅れ等)によって、目標とするピッチ角と現在のピッチ角との誤差が生じる。熟練者は、誤差を軽減するために、高周波補償により進み補償を代用することが示唆された。この性質は、ピッチ角操作の指令が与えられた直後に表れ、まず誤差を小さくする方向に操縦桿を素早く操作し、次にピッチ角の応答が大きくなり過ぎるのを抑えるために操縦桿を逆の方向に操作するという操縦法に対応することが示された。これらの分析結果より、熟練者は自らの生理的限界の中で状況に合わせて操縦方法を決定しており、その結果、パイロットの操縦に非線形性が含まれると考察した。最後に、セスナ機のピッチ角操縦についてシミュレータ実験を行い、非線形分析結果が実際の航空機の操縦に応用できることを示した。
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Research Products
(4 results)