2004 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカイン遺伝子を用いた魚類の健康診断法とそれを用いた選抜育種法の確立
Project/Area Number |
04J01472
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
河野 智哉 宮崎大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 硬骨魚類 / サイトカイン / TNFリガンド |
Research Abstract |
本年度は、魚類よりサイトカイン遺伝子の分離を中心に研究を行った。フグおよびゼブラフィッシュのゲノム解析によって、硬骨魚類に新規の腫瘍壊死因子(TNF)遺伝子を分離した。TNFは多表現型遺伝子であり、炎症反応、アポトーシス、細胞の増殖などに関与することで知られている。ヒトおけるTNF/LT(リンフォトキシン)の染色体座は、染色体上のMHC領域に存在することが知られているが、硬骨魚類においてそれらの染色体座は明らかにされていない。また、硬骨魚類においては、これまでTNF-α様遺伝子しか分離、解析されていない。本研究では、フグおよびゼブラフィッシュにおけるTNF様遺伝子(αおよびβ)染色体座を明らかにした。この染色体座は、これまでに解析されたTNF-α遺伝子と同一染色体上に横並びに形成されていた。フグおよびゼブラフィッシュにおいて、TNF-αおよび-β遺伝子間の染色体上での距離は、それぞれ7.5kbおよび19kbであった。また、哺乳類においてTNF/LT染色体座の存在する染色体に存在する他の遺伝子(GABA-R,APO-M,TXL-2,BAT-3 etc.,)も、フグおよびゼブラフィッシュの同一染色体上に存在することが明らかとなった。魚類のTNF-α遺伝子は膜貫通領域、ジスルフィド結合を形成する二つのシステイン残基、TNFファミリーモチーフを有し、染色体上での構造は4つのエキソンと3つのイントロンより構成されていた。新規に同定されたTNF-β様遺伝子は、TNF-αの上流に存在し、転写方向もαと同じであった。しかしながら、読み枠はフグで5つ(5エキソン)、ゼブラフィッシュで4つ(4エキソン)で構成されていた。また、硬骨魚類のTNFリガンドにおけるプロモーター領域の転写部位は、哺乳類のプロモーター領域と比較して非常によく保存されていた。 組織における発現解析からは、フグのTNF-αおよび-β様遺伝子は、腎臓、肝臓、脾臓、腸、筋肉、表皮の全ての組織において発現が確認された。しかし、ゼブラフィッシュにおいては、TNF-αは同様の発現パターンを示したが、TNF-β様遺伝子は腎臓においてのみ発現していた。この違いは、転写因子の存在位置や種類の違いによるものかもしれない。哺乳類におけるTNF-βの発現は、マクロファージ、単球、好中球、NK細胞、T細胞などで確認されているが、現段階で適当な結論を導くにはデータ不足である。このため、今後更なる発現解析や機能解析が必要と考えられる。
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