2005 Fiscal Year Annual Research Report
複合機能性層状コバルト酸化物の設計開発:熱電変換素子及び燃料電池電極材料への応用
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04J01600
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石渡 晋太郎 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 層状コバルト酸化物 / マンガン酸化物 / 磁気フラストレーション |
Research Abstract |
渡航先のPrinceton大学Cava研究室にて、電池材料として期待されるホランダイト型マンガン酸化物Ba_xMn_8O_<16>を合成し、X線による構造解析と磁化測定、電気抵抗測定を行った。また、粉末試料をNISTへ送り、低温で中性子回折実験を行うことで磁気構造に関する情報が明らかになった。この物質はスピン間に強い相互作用があるにもかかわらず、非常に低温まで磁気相転移を示さない。その原因として、結晶構造解析の結果を考慮すると、マンガンが三角格子を組んでいることによる幾何学的フラストレーション、あるいは符号の異なる超交換相互作用が拮抗していることが予想される。今回の中性子回折実験からは、複雑な長周期の磁気構造をもつことが明らかになり、これらの予想を支持するものとなった。本研究から、従来まで主に電池材料として研究されてきた低次元構造をもつ遷移金属酸化物が、新たな磁性研究の舞台として有望であることが示された。また、ホランダイト型化合物は一般に比較的低温でしか得られず、結晶性が悪いために精密な構造解析を行うことが困難である。本研究において、塩化物を原料に混ぜると比較的低温でも結晶性の高い試料が得られることが見出されたことも、特筆すべき成果だと言える。 電池材料、熱電材料として期待される層状コバルト酸化物Na_xCoO_2は、合成ルートを工夫すると同じ組成でも異なる結晶構造(対称性)をもつ物質を合成することが可能であり、物性だけでなく化学的にも興味深い系である。今回Na_<0.7>CoO_2をヨウ素などで処理することによりナトリウムイオンの含有量をコントロールすることに成功した。Na_<0.5>CoO_2の組成に関しては単結晶試料の電気抵抗測定を行い、低温で電荷秩序に起因した金属絶縁体転移が起こることを確認した。現在これらの結果は、共同研究者のL.ViciuがPhys.Rev.Bに投稿中である。
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Research Products
(4 results)