2004 Fiscal Year Annual Research Report
低次元相関電子系の相転移現象に現れる多体問題と3次元系へのクロスオーバー
Project/Area Number |
04J01728
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上出 健仁 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 朝永-Luttinger液体 / 電子相関 / 共鳴トンネル / 不純物ポテンシャル |
Research Abstract |
カーボンナノチューブや量子細線などの相関一次元電子系の理論的モデルとされる朝永-Luttinger液体(TL液体)における不純物問題の研究を行った。特に最近スピントロニクスへの応用の観点から磁場中のTL液体の研究が成されるようになってきた。 本年度は不純物が二つある場合に起こる共鳴トンネル現象の理解を深めるために、電気伝導率のゲート電圧やゲート磁場による振動特性を解析的に求めた。 特に一次元細線全体に一様な磁場がかかり、TL液体特有であるスピン-電荷分離が壊れた系において、ゲート電圧・ゲート磁場空間で電気伝導率のピークが作る格子構造が、磁場の強さに比例した角度で回転することを示した。これによりスピン密度波と電荷密度波の混成度が電気伝導率を通して実測されうることが明らかになった。 またTL液体において電子間相互作用が斥力か引力かにより、絶対零度において不純物を電子が透過できるか否かが完全に分かれることが、不純物スケーリングの問題として知ちれている。この不純物スケーリング問題も磁場下でスピン・電荷分離が実現されていない状況での研究はされていなかった。この磁場下TL液体の不純物スケーリングの問題について取り組み、磁場下TL液体では磁場に対して特定の方向を向いた電子のみを透過し逆方向を向いた電子は完全反射するという新しい相が出現することを示し、不純物によりスピンカレントを生み出せる可能性を示した。 以降、現在に至るまで不純物スケーリングの理論的研究を進め、最近は不純物ポテンシャルが弱い極限、強い極限のみでこれまで開発されてきたスケーリング則の導出法を拡張し、現実系への応用を可能にするために、有限の強さの不純物ポテンシャルを取り扱える理論を構築している。
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Research Products
(1 results)