2005 Fiscal Year Annual Research Report
低次元相関電子系の相転移現象に現れる多体問題と3次元系へのクロスオーバー
Project/Area Number |
04J01728
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上出 健仁 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 朝永・ラッティンジャー流体 / 不純物スケーリング / 共鳴トンネル / 金属・絶縁体転移 / 次元クロスオーバー |
Research Abstract |
本年度は大きく分けて3つの研究に従事した。 (1)一次元強相関電子系における不純物問題。一次元電子系の大きな特徴として局所的なポテンシャルがあると、極低温でゼロバイアス近傍での電気伝導が大きく阻害され、絶対零度でコンダクタンスが零になることが知られている。これは不純物ポテンシャルが温度の関数として実効的にスケールされるからである。この不純物のスケーリングに関しての研究は、不純物ポテンシャルが弱い極限と強い極限で、摂動的な繰り込み群解析に基づいて理解されて来たものの、中間領域におけるスケーリングの流れはほぼ理解されておらず、さらにスピンに依存する相互作用のある電子系では手つかずだった。本研究で、任意の強さのポテンシャルとスピンに依存する相互作用を同時に取り扱える枠組みを開発し、境界条件付のボソン化法の手法(Open Boundary Bosonization)を一般化し、絶対零度での相図を得た。 (2)一次元電子系における二重バリア構造の共鳴トンネル問題に関する研究。磁場によりスピン空間の対称性を破れた朝永・ラッティンジャー流体(TL流体の共鳴トンネルによるコンダクタンスの振動を調べた。本年度はバリアの高い極限で、二重バリア内の電子数がほとんど揺らがないことを仮定したsequential tunnelingの描像でコンダクタンスを求めた。結果、弱いバリアのときと同様、スピン・電荷の混成角を反映し振動模様が回転することが分かった。 (3)疑一次元物質(一次元鎖)の金属・絶縁体転移には、鎖間ホッピングが大きな関係があると考えられている。特に、電荷ギャップが鎖間のホッピングエネルギーより大きいときに絶縁体転移が起きるなど、それを支持する実験的事実もあるが、その全貌は理解されていない。我々は鎖間ホッピングと相互作用に関する繰りこみ方程式を求めその定性的な理解に至った。
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