2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J01748
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 彩子 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 密度汎関数 / 時間依存密度汎関数法 / 内殻励起 / 価電子励起 / 内殻軌道 / 価電子軌道 |
Research Abstract |
生体分子などの巨大分子の計算には、低コストかつ高精度な計算手法が必要である。そこで本研究では、比較的少ない計算コストで高精度に励起状態を求めることができる時間依存密度汎関数法(TDDFT法)に注目した。密度汎関数法において頻繁に用いられる汎関数の一つに、B3LYPが挙げられる。このB3LYP汎関数を用いると、価電子が大きく寄与するプロパティに関しては、非常によい記述を得ることができる。また、TDDFT法を用いた励起状態計算においても、価電子励起に関しては実験値と非常に近い結果を与える。しかし、内殻励起状態やRydberg励起状態に関しては、B3LYPでの記述は非常に粗末なものであり、BHHLYPという汎関数を用いた方がよい結果を与えることが分かっている。そこで本研究では、内殻励起状態と価電子励起状態の双方をバランスよく記述することの出来る新しい汎関数CV-B3LYPを開発した。具体的には、分子軌道を内殻軌道と価電子軌道の2種類に分類し、電子状態を求めるのに必要な交換エネルギー項に関して、寄与する軌道の種類によって用いる汎関数の形を区別した。作成した汎関数を用いて計算を行った結果、占有軌道に関して、内殻軌道のエネルギーはBHHLYPに近く、価電子軌道のエネルギーはB3LYPに近い値を与えるという結果を得ることに成功した。また、仮想軌道のエネルギーはB3LYPに近い値が得られた。今後は、この軌道エネルギーを用いて、励起エネルギーやその微分値の計算を行う予定である。また、同様の手法を用いて、Rydberg励起状態に関しても記述の改善を目指す。上記の結果は、本年度3月開催の学会で発表予定である。
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