2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J01748
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中田 彩子 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 交換相関汎関数 / 時間依存密度汎関数 / 内殻励起 / 価電子励起 / Rydberg励起 / 第二周期元素 / 第三周期元素 / CVR-B3LYP |
Research Abstract |
生体分子などの巨大分子の電子状態計算には、低コストで高精度な計算手法が必要である。本研究では、比較的低コストで定量的な結果を与える時間依存密度汎関数法に着目した。密度汎関数法において用いられる汎関数の代表的なものに、B3LYP汎関数が挙げられる。このB3LYP汎関数は、価電子が大きく寄与する物性に関しては非常によい記述を与えるが、内殻励起状態やRydberg励起状態の記述精度が低いことが知られている。これに対し本研究者は、内殻、価電子及びRydberg軌道を区別し、結合演算子法を応用することによって軌道間の直交性を保ちながらそれぞれに適切な汎関数の形を用いることで、内殻、価電子及びRydberg励起状態の三種類全てをバランスよく記述することのできる新しい汎関数CVR-B3LYPを開発してきた。このCVR-B3LYP汎関数は、これまで主に第二周期元素から構成される分子に適用されてきた。そこで本研究ではまず、従来の汎関数及びCVR-B3LYPを用いて第三周期元素の内殻励起ヱネルギー計算を行い、精度を検証した。その結果、第三周期元素のK殻とL殻はどちらも内殻軌道であるにもかかわらず適切な汎関数の形が異なることがわかった。そこで、K殻軌道とL殻軌道に関しても直交性を保ちながらそれぞれ異なる汎関数の形を用いるようにCVR-B3LYP汎関数を改良した。改良したCVR-B3LYP汎関数を用いて励起状態計算を行った結果、K殻及びL殻励起エネルギーに関する平均絶対誤差は同程度となり、どちらの内殻軌道からの励起状態も高精度に記述することができた。また、価電子励起状態に関しても、B3LYPと同程度に高精度で記述できることが確認された。以上より、第三周期元素に関しても内殻軌道及び価電子軌道の双方を高精度に記述することが可能となった。上記の結果は、国内学会3件、国際学会2件で発表された。
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Research Products
(3 results)