2005 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の防御特性を生かした落葉広葉樹林の健全性維持技術の創出
Project/Area Number |
04J01802
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Research Institution | Hokkaido Forestry Research Institute |
Principal Investigator |
松木 佐和子 北海道立林業試験場, 林業経営部, 特別研究員(PD)
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Keywords | フユシャクガ / 開葉フェノロジー / 生物間相互作用 / 被食防衛 / ワダイカンバ / シラカンバ / 森林衰退 / 高CO_2環境 |
Research Abstract |
1 樹木の開葉フェノロジーに伴う葉質の変化が植食者に与える影響 2004年頃から北海道各地で発生しているフユシャクガ類の食害パタンや樹木への影響を調べるため、昨年度に引き続き調査を行っている。今年度は開芽期における葉質変化と植食者の挙動について詳細な調査を行った。林道脇に生育するシラカンバ、ウダイカンバ、ミズナラの3種について、各樹種30個体ほどに観察シュートを設け、2、3日ごとに観察と葉のサンプリングを試みた。以上の調査からミズナラは開芽から開葉に向かって防御形質が高まって行くパタンが見られたのに対し、カバノキ属の2種は開芽のごく初期に高い防御形質を保持しており、開葉とともにその形質が急激に失われた後、再び緩やかに防御物質濃度を高めて行くと言う変則的なパタンを示す事が明らかになった。また、フユシャクガもこれらのパタンに敏感に応答しているものと思われる挙動を示した。 2 北海道のウダイカンバ山火再生林におよぼすフユシャクガ類大発生の影響 北海道立林業試験場では「ウダイカンバ山火再生林における森林衰退の解明」についてこれまで調査を行っているが、フユシャクガ大発生が森林衰退におよぼす影響を調べる調査を昨年度から共同研究にて行っている。調査から、食害頻度は斜面の上部と下部では上部のほうが著しく高く、食害面積率が高い個体ほど水ストレスを受けていることが分かった。また斜面上部の個体では夏シュートの成長率が抑制されていることも分かった。 3 野外における高CO_2操作実験での食葉性昆虫の出現パタンと樹木への影響 北海道大学北方生物圏フィールド科学センターでは、野外において高CO_2環境を作り出す操作実験(FACE)が行われている。本研究では、高CO_2条件区と大気条件区におかれた数種類の落葉広葉樹稚樹上において、植食者の密度や食害度、葉の防御物質について調査を行っている。これまでの調査から、高CO_2条件区と大気条件区では植食者の季節消長に違いが見られ、高CO_2条件区の昆虫は幼虫期の生育期間が延長することが野外のセンサスと室内摂食実験から明らかになった。
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