2005 Fiscal Year Annual Research Report
初期中世アイルランドの法と社会-法律文書編纂の経緯と法・裁判システムの実態の解明
Project/Area Number |
04J01812
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
田付 秋子 国学院大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アイルランド / 中世史 / 古アイルランド法 / 法律文書 / 裁判 / 教会 |
Research Abstract |
研究課題である初期中世アイルランドにおける法律文書編纂過程および裁判システムの解明のための研究の一環として、本年度は主に以下の研究を行った。 1.史料研究 前年度に引き続き、古アイルランド語法律文書特の文書編纂過程および裁判制度に関する史料を中心に、精査と翻訳作業を行った。主な文書として、『ブレサ・ネヴェド』『クリース・ガヴラハ』『カーン・ポードリグ』『カーン・ウシルヴェ』、そのほか断片史料等がある。本年度は、カーンと呼ばれる一連の教会法令についても集中的に調査を行った。また、研究の中心的課題ではないが、古アイルランド法を含む中世法律史料の翻訳をめぐる諸問題についての報告と問題提起を、日本ケルト学会研究会(2006年1月)において行った。 2.7、8世紀アイルランドの裁判制度における世俗裁判と教会裁判の関係に関する研究 教会および世俗の裁判権の関係は、この時期のアイルランドにおける大きな問題であり、本研究課題の中でも重要な位置を占める。昨年に引き続きこの問題の考察を行ったが、本年度は特にカーン史料を用いて、教会・教会法と世俗の政治権力や社会との関係を探った。その成果の一端を、日本アイルランド協会歴史研究会の研究会(2005年7月)および西洋中世の教会と社会研究会において、それぞれ異なる史料と問題観点から報告した。 3.7、8世紀アイルランドにおける判決人 裁判・紛争解決に関わった様々な人のうち、最も専門的職業として法に携わった世俗の判決人について、史料をまとめ考察する作業を行った。更に、判決人以外の関係者、即ち、世俗権力者、教会、フィリ(詩人)等との関係についても考察を進めている。本年度内には報告等には至らなかったが、引き続き来年度の課題としたい。 4.史料収集と学会参加 2005年11月にダブリン高等研究所主催の学会への参加および現地での資料収集を予定していたが、大変遺憾ながら、直前に脚の筋断裂を負ったため渡航することを得なかった。その分の予算を図書の購入に当てさせていただいた。
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