2004 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール候補天体における状態遷移と時間変動の大局的3次元磁気流体数値実験
Project/Area Number |
04J01907
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Research Fellow |
中村 真美 (町田 真美) 国立天文台, 理論研究部, 学振研究員PD
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Keywords | 磁気流体数値実験 / 降着円盤 / ブラックホール / 状態遷移 |
Research Abstract |
白鳥座X-1などの銀河系内の星質量ブラックホール候補天体では、X線スペクトルがハードな状態とソフトな状態の間を遷移するX線スペクトルの状態遷移や、ジェット現象、準周期振動(QPO)などが観測されている。これらの活動性の起源である降着円盤からの角運動量の抜き取りの原因は、長年の研究により降着円盤内部の磁気乱流であることが確立してきた。今年度は特に、X線スペクトルがハードな状態からソフトな状態への遷移の解明を目的に研究を行った。これまでの研究結果から、X線スペクトルがハードな状態は光学的に薄い、移流優勢降着流であり、X線スペクトルがソフトな状態は円盤からの黒体放射が観測されていることから、光学的に厚い標準降着円盤に対応していると考えられている。光学的に薄い状態から厚い状態への遷移を考える場合には、輻射冷却の効果が重要になってくる。申請者らは、これまで輻射の無視できる移流優勢円盤に対応する降着円盤の磁気流体シミュレーションを行ってきた。そこで、本研究では、光学的に薄い場合の制動放射を仮定して、高温で低密度な移流優勢円盤に輻射冷却の効果が含まれるとどのような変化があらわれるのかを調べた。また、高温の降着円盤内部は磁気乱流状態になっている。この磁気乱流が冷却の効果によって、どのように変化するか、磁束は降着円盤から流出するのか、磁気リコネクションによって散逸してしまうのかなども調べた。 その結果、質量降着率がある臨界値を超えると、降着円盤で熱不安定性が成長し、降着円盤のガス密度が上昇し、温度が低下して、降着円盤は鉛直方向に収縮することがわかった。また、降着円盤内部の磁束は、磁気浮力による磁束流出よりも、輻射による冷却の時間スケールのほうが短いためにガスと一緒に収縮し、磁気圧が上昇することも示された。更に、降着円盤内部の磁気圧がガス圧よりも強くなると降着円盤の収縮はとまり、円盤密度は一定の状態に飽和することがわかった。この磁気圧優勢円盤は、いまだに光学的に薄い状態にある。このような状態は、系内ブラックホール連星で実際に観測されているハードインターメディエイト状態に対応していると考えられる。
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Research Products
(4 results)