2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール候補天体における状態遷移と時間変動の大局的3次元磁気流体数値実験
Project/Area Number |
04J01907
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Research Fellow |
中村 真美 (町田 真美) 国立天文台, 理論研究部, 特別研究員PD
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Keywords | 磁気流体数値実験 / 降着円盤 / ブラックホール / 状態遷移 / 準周期振動 |
Research Abstract |
ブラックホール候補天体はX線スペクトルの状態遷移、ジェット現象、準周期振動(QPO)などの様々な時間スケールで生じる激しい変動現象を起こす事が知られている。これらの活動性の起源は中心天体の周りを回転しながら落下するガス(降着円盤)が解放する重力エネルギーであると考えられており、その角運動量輸送機構が長年の謎であった。しかし、この10年の研究から降着円盤からの角運動量の抜き取りの起源は、降着円盤内部の磁気乱流であることが確立してきている。また、ブラックホール候補天体の様々な変動現象の原因として、磁気的活動性もあげられている。 今年度はX線スペクトルがハードな状態からソフトな状態への遷移の解明、遷移途中でしばしば観測される準周期運動と降着円盤の関係に関して調べた。これまでの研究から、X線スペクトルがハードな状態は光学的に薄い、移流優勢降着流であり、X線スペクトルがソフトな状態は降着円盤からの黒体放射が観測されていることから、光学的に厚い標準降着円盤に対応していると考えられている。光学的に薄い状態から厚い状態への遷移を考える場合には、輻射冷却の効果が重要になってくる。今年度は昨年度に続いて光学的に薄い場合の放射冷却機構を考慮した数値実験を行い、その進化を調べた。 その結果、質量降着率がある臨界値を超えると、降着円盤で熱不安定性が成長し、降着円盤の温度が低下するため鉛直方向の釣り合いがやぶれ、鉛直方向に収縮することがわかった。また、降着円盤内部の磁束は、磁気浮力による磁束流出よりも、輻射による冷却の時間スケールのほうが短いためにガスと一緒に収縮し、磁気圧が上昇することも示された。更に、降着円盤内部の磁気圧がガス圧よりも強くなると降着円盤の収縮はとまり、円盤密度は一定の状態に飽和することがわかった。この磁気圧優勢円盤は、いまだ光学的に薄い状態にある。磁気圧優勢円盤の安定性を調べた所、この円盤は熱的、力学的に安定な平衡解である、つまり、標準降着円盤、移流優勢円盤、スリム円盤に続く新たな安定解を発見した。このような状態は、系内ブラックホール連星の状態遷移時に観測される非常に明るいスペクトルがハードな状態に対応していると考えられる。 また光学的に薄い輻射が無視できる場合、条件によっては8シュバルツシルト半径付近に内側トーラスを形成すること、内側トーラスは磁気エネルギーの蓄積、解放を約10Hzの周期で繰り返すこと、内側トーラスが高振動数の振動を励起することも発見した。
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Research Products
(4 results)