2004 Fiscal Year Annual Research Report
樹木集団の個体群構造が繁殖及び遺伝子流動に与える影響の解明
Project/Area Number |
04J01938
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
平山 貴美子 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 小集団化 / 種子生産 / 近親交配 / 花粉不足 / 近交弱勢 / マイクロサテライト / 人工受粉実験 / シデコブシ |
Research Abstract |
近年、森林の断片・孤立化や面積の減少などが進行しており、森林に生育する樹木は、個体密度の低下や集団内個体の平均血縁度の増加といった個体群の生態的・遺伝的構造の変化にさらされている。樹木個体群の更新・維持や集団の遺伝子流動にとって重要な役割を果たす繁殖過程は、交配様式、近交弱勢、資源制約など多くの要因が関わっており、開花個体密度や血縁度と行った生態的・遺伝的双方の個体群構造が最も影響を及ぼす過程であるといえる。本研究では、森林の保全に役立つ新たな知見を提示すべく、樹木の個体群構造が種子による繁殖及び遺伝子流動に与える影響とそのプロセスを、生態・遺伝的両視点から定量的に明らかにすることを目的としている。平成16年度の研究成果は以下の通りである。 1.絶滅が危惧されているシデコブシについて、開花特性の調査や人工受粉実験、種子のマイクロサテライト分析を行い、シデコブシの種子生産が、自殖に伴う近交加重と花粉不足によって大きく制限されていることを指摘した。 2.開花株数の異なる複数のシデコブシ集団を対象に、マイクロサテライト分析、人工受粉実験などを行い、近親交配、近交弱勢、花粉不足の程度を比較した。その結果、小集団化すると近親交配の程度が高まる一方で、近親交配が進んでも理論上予測されているような近交加重の減少はそれほど大きくなく、花粉不足やその他の要因によって種子生産が大きく減少する可能性があることを指摘した。 3.シデコブシの繁殖段階における近親交配がその後の更新に及ぼす影響を明らかにするため、人工受粉実験により得られた種子を用いて栽培実験を行った。これにより、発芽期以降に母樹効果(一種子への資源配分の影響)が現れ、高い結実率を示す他殖種子の生存が低下する可能性が示唆された。 4.その他、自然状態において密度変化・クローン成長が顕著にみられる樹木種についての情報収集等を行った。
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