2005 Fiscal Year Annual Research Report
樹木集団の個体群構造が繁殖及び遺伝子流動に与える影響の解明
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04J01938
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
大橋 貴美子 (平山 貴美子) 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 種子生産 / 開花フェノロジー / 空間的距離 / 遺伝的距離 / 花粉不足 / 人工受粉実験 / シデコブシ / エゾユズリハ |
Research Abstract |
近年、森林の断片・孤立化や面積の減少などが進行しており、森林に生育する樹木は、個体密度の低下や集団内個体の平均血縁度の増加といった個体群の生態的・遺伝的構造の変化にさらされている。樹木個体群の更新・維持や遺伝子流動にとって重要な役割を果たす繁殖過程は、交配様式、近交弱勢、資源制約など多くの要因が関わっており、開花個体密度、血縁度といった生態的・遺伝的双方の個体群構造が最も影響を及ぼす過程であるといえる。本研究では、森林の保全に役立つ新たな知見を提示すべく、樹木の個体群構造が種子による繁殖及び遺伝子流動に与える影響とそのプロセスを、生態・遺伝的両視点から明らかにすることを目的としている。 前年度までの研究では、絶滅が危惧されているシデコブシについて、開花特性に伴う自殖や花粉不足によって種子生産が大きく制限されていること、また、小集団化すると、自殖や花粉不足の増加等によって種子生産が大きく減少する可能性があることを指摘してきた。平成17年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.シデコブシの大集団において、開花フェノロジーが種子生産に与える影響を調べ、集団(個体群)内で遅く咲く株ほど、さらに株の中で遅く咲く花ほど結果率(花が果実になる割合)が有意に高くなることを示し、開花フェノロジーのばらつきが種子生産に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 2.シデコブシの個体群内での距離が種子生産に及ぼす影響を検討するため、空間的距離と遺伝的距離の関係について解析した。 3.自然状態において顕著な密度変化がみられる雌雄異株低木種エゾユズリハについて、個体群構造、開花・結果量の年変動、花粉散布パターンを調べ、同時に花粉付加実験を行った。その結果、エゾユズリハは開花の同調性などによって繁殖効率を高めるという特徴をもつものの、オスとメスの空間配置によって繁殖が大きく制限されていることを指摘した。
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Research Products
(1 results)