Research Abstract |
舞踊動作におけるヒトの動作パターンを検討するため,まず型の無い自由な舞踊動作の踊りを玄人の踊り手と素人の踊り手双方の計測を行った.また,それぞれが舞踊動作をする際に意識した注目点を調べ,動作の獲得における「こつ」や「勘所」といったものが,知識の差でどのように異なっているのか観察行い,実際に動作獲得時における制御変数と制御状態を推定するモデルの構築を行っている. 本研究では,印象評価において知識の有無に関わらず,特に相関の高かった「好き-好きでない」と「固い-やわらかい」評価軸で,関連性のある運動特性の検討を行った.この二つの印象評価軸に対して,関連する運動特性を比較検討したところ,舞踊の知識有りグループでは,関連する運動特性が単関節角度の時系列データから得られる運動特性の複数の組み合わせとその単関節の組み合わせが作る指先軌道の運動特性の両方で抽出されていた. 一方,知識無しグループでは,対応する運動特性は,目立った運動の単関節時系列角度データから得られたと考えられる. 結果から,知識有りの被験者では,「好き-好きでない」印象には,手首のこねりと肩の動きをという上肢運動の特徴ある一部分を見て印象を評価していると示唆される.知識無し被験者では,同じ印象でも手首,前腕,肩と全体を見て評価を行っていると示唆される. また,「固い-やわらかい」印象の場合,知識有り被験者では,停留の仕方や停留の回数などを見て評価していると示唆されるのに対し,知識無し被験者では一番大きく動作している場所によってその印象を決めていると示唆される. 舞踊動作においても舞踊の知識の差によって,感性(印象)や感性に関連する物理的特徴(運動特性)に違いがあり,ヒトの知覚や認知において知識の差における影響を明らかにできた. さらに,舞踊の知識の有無により主観的な印象よって分類された舞踊動作の上肢関節の相互関連性を明らかにすることを目的として,観察者の印象における踊りの分類をもとに「上手」と判断された舞踊動作の運動計測を行い,多変量自己回帰モデルを用いて,その関連性を明らかにすることを試みた.
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