Research Abstract |
午後に生じる眠気は,作業効率を落とすのみでなく,職場での事故や作業ミスを誘発する.これまで,午後の眠気を抑えるために,さまざまな方法が考案されてきた.なかでも,約20分間の短時間仮眠が注目され,その効果は多くの研究により実証されている.いくつかの企業においては,職場で短時間の仮眠をとる試みがなされているようであるが,安全かつ衛生的な仮眠が可能な場所を確保することは,どの職場でも容易であるとは考え難い.その場合,仮眠以外の選択肢が望まれる. 近年,高照度の光受容による覚醒度の維持・亢進効果が注目され,眠気防止対策としての利用が模索されている.夜間には高照度照射装置が必要となるが,日中であれば,特別な装置を用いるまでもなく自然光が利用できる.環境負荷,費用対効果を考慮すると,自然光の利用が望ましいと考えられる.しかしながら,自然光が午後の眠気に与える効果を実証的に示した報告はほとんどない.そこで本研究では,限られた昼休み時間にも利用できるような短時間(約30分間)の自然光受容が,覚醒度に及ぼす影響を調べることを目的とした. 今年度は,昨年度得られた実験データ(脳波,自律神経系活動,課題パフォーマンス,主観的眠気など)を詳細に分析し,原著論文としてまとめることを課題とした.分析の結果,短時間の自然光受容が脳波を指標とする生理的覚醒度を上昇させ,主観的眠気を抑える効果があることが分かった.本研究の結果は,原著論文として国際誌上で発表された.
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