2006 Fiscal Year Annual Research Report
老化におけるシナプス可塑性と空間記憶の細胞および分子メカニズム
Project/Area Number |
04J02133
|
Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
宮本 嘉明 国立長寿医療センター, 老化制御研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 老化 / 海馬 / 嗅周囲皮質 / 空間認知 / 物体認知 |
Research Abstract |
本邦における人口の高齢化は、世界に例をみない速さで急速に進んでおり、高齢者に特有の疾患、特に老人性痴呆への対策が急務となっている。これまで、アルツハイマー病などの疾病による老人性痴呆のメカニズムについては、数多くの基礎・臨床研究が行われてきたが、正常な老化による老人性痴呆のメカニズムについては、ほとんど研究がなされていない。そこで、本研究では、正常老化における記憶学習障害のメカニズムを検討し、その予防・治療法開発の一助となすことを目的とする。 米国アリゾナ大学において、空間・物体認知能力における正常老化の影響を行動学的・電気生理学的実験手法により検討した。つまり、若齢(9ヶ月齢)および老齢(24ヶ月齢)ラットを用いて、海馬依存型空間学習記憶試験および嗅周囲皮質依存型物体認知試験を行った後、記録ドライブを海馬に、刺激ドライブを嗅周囲皮質に移植し、電気刺激誘発シナプス可塑性を測定した。その結果、老齢ラットの空間認知能力は、若齢ラットと比較して有意に低下していた。一方、老齢ラットの物体認知能力は、短期遅延時間(2分間)では、新奇物体を認知できるものの、その認知レベルは若齢ラットより低く、より長い遅延時間(2時間、24時間)では、新奇物体を認知できなかった。さらに、老齢ラットの嗅周囲皮質高頻度刺激による海馬長期増強は、若齢ラットと比較して低下していた。すなわち、正常老化により、空間認知能力が低下するだけではなく、物体認知能力も遅延時間依存的に低下し、これらの低下は、嗅周囲皮質-海馬神経回路の機能低下によるものであった。 本研究課題の成果をまとめると、正常老化による空間・物体認知能力の低下は、enrichment trainingにより改善され、その改善は、嗅周囲皮質-海馬神経回路の機能改善によるものであることが明らかとなった。さらに、enrichment trainingによりその蛋白質発現量が変化する分子は、老人性痴呆を予防するための標的候補となることが示唆された。
|
Research Products
(2 results)