2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J02203
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
江副 祐一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部・高エネルギー天文学研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | X線天文学 / 活動銀河中心核 / X線カロリメータ / 軽量X線光学系 / MEMS技術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、平成17年度に独立行政法人宇宙航空研究開発機構によって打ち上げられた日本の科学衛星「すざく」搭載の、世界初の宇宙用X線マイクロカロリメータXRSを用い巨大ブラックホールAGNを観測し、AGNの連続成分とライン成分の差、いわゆる「エコー」観測を行うことである。これにより、ブラックホールに落ち込む物質の運動や分布を世界で初めて正確に決めることができると期待された。しかし、衛星の軌道投入には成功したものの、XRSの冷媒である液体ヘリウムの蒸発という取り返しのつかない事故によりXRSは観測を行うことが不可能になってしまった。私はこの無念を晴らすべく、より優れたカロリメータを開発し、いちはやく次世代の衛星に搭載してもらうよう研究を継続して進めている。 そこで本年度、私は、産総研や生産研と共同で、インハウスでのカロリメータ開発環境の立ち上げを主導的に行い、大学院生および私自身の手ではじめてカロリメータの自作に成功した。そのノイズレベルはこれまでセイコーと協力して作成した過去最高のレベル(約6eV)とほぼ同程度(7eV)を達成し、今後の改善が期待できる。この結果は、日本天文学会および応用物理学会で発表した。 また同時にカロリメータの光学系として、我々自身が考案した、半導体の微細構造加工技術MEMSを応用した、超軽量X線光学系の開発を継続して進めている(特許出願中)。我々はシリコンの異方性エッチングを用いて自らインハウスで作成した鏡の試作品の表面粗さおよびX線反射テストを行い、世界でめてこの方法でX線反射鏡が作成できることを実証した。結果は2005年の国際会議SPIEで発表し、米国NASAの研究者から共同研究の申し込みを受けるなど、評価を得ている。また日本天文学会にて発表も行った。現在は、引き続き、実際の光学系をくみ上げるべく研究を進めている。 さらに、これらMESM技術を生かした、カロリメータ開発や光学系開発がMEMS技術の専門家から評価を受け、2006年出版予定のMEMS技術の専門書への執筆を依頼された。そして受け入れ教官である満田教授とともに「宇宙応用」という内容で執筆を行った。 天体のデータ解析では、博士論文で研究を行った、ブラックホールのもととなる若い大質量星の生まれる形成領域NGC6334の米国チャンドラ衛星のデータ解析を論文にまとめ受理された。現在は、また別の領域であるNGC2024の結果を論文の投稿準備を行っている。
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