2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J02256
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Research Fellow |
長谷川 拓也 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | エルニーニョ / 長周期変動 / 海洋表層貯熱量 / 太平洋 |
Research Abstract |
本研究の初年度にあたる今年度は、以下における項目について研究を進め、結果について学会発表を行った。 (1)観測データ解析に基づく太平洋表層貯熱量の変動特性 過去の研究でエルニーニョ/南方振動現象(以下、ENSO)と空間スケールが類似しているが、タイムスケールはより長い太平洋10年スケール振動(Pacific Decadal Oscillation : PDO)について多くの研究が行われた。本研究では、まだ詳細が明らかでない、海洋表層貯熱量のPDOに関係する変動について研究を行った。その結果、10年スケールにおいて海洋表層貯熱量偏差は、気候変動に重要な海域である太平洋中部赤道域に大きな振幅を示すが、それは、10年スケールの海洋表層貯熱量の北太平洋熱帯域におけるENSOと類似する反時計回りの伝播によってもたらされる変動と、南太平洋熱帯域における風応力の変動によって生ずる海洋の変動の両方が寄与することが原因であることが示唆された。この結果はPDOに関して新たな知見を与える結果であり、PDOのさらなる理解に寄与するものである。さらに、ENSOとPDOの間に見られる関係について、熱帯域の海洋表層貯熱量に着目した基礎的な解析も行った。 (2)数値モデル実験結果に基づく太平洋表層貯熱量の変動特性 気象研究所が開発した海洋大循環モデルの出力データを解析して、観測データ解析結果と比較した。本年度は貯熱量に着目した基礎的な解析を行った。その結果、全般的には、モデルで再現された海洋表層貯熱量は観測結果と一致することが分かった。ENSOに関係する貯熱量の北太平洋熱帯域における反時計回りの伝播が良く再現されることを確認した。この結果は、次年度以降に数値モデル実験をより本格的に行うための有益な情報を与えるものである。
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