2004 Fiscal Year Annual Research Report
ホシササノハベラをモデルとした魚類の性転換の生理・分子機構の解明
Project/Area Number |
04J02290
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
太田 耕平 基礎生物学研究所, 生殖生物学研究部門, 日本学術振興会特別研究員SPD
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Keywords | 魚類生殖 / 性転換 / 性ステロイドホルモン |
Research Abstract |
性転換現象は脊椎動物の中では魚類に特に多くみられる現象で、その生理メカニズムを明らかにすることは雌雄の配偶子形成機構の理解にとどまらず、脊椎動物における性の維持・調節や魚類にみられる性の多様性についての認識を著しく進展させるものと考えられる。これまでにホシササノハベラをモデル動物として、生殖腺における雌雄の配偶子形成を直接的に制御する性ステロイドホルモンについての解析を行い、雌雄の生殖腺で合成される全ての性ステロイドの合成課程を明らかにすると共に、雌雄それぞれへの各種ステロイド投与実験により、2種のアンドロゲン(testosterone,11-ketotestosterone)が卵巣を精巣へ、一方、2種のエストロゲン(estrone、estradiol-17β)が精巣を卵巣へ転換させることを明らかにした。すなわち、生殖腺におけるエストロゲンとアンドロゲンとのステロイド合成系の転換が、直接的に生殖腺の卵巣と精巣との転換を制御していると考えられた。本年度はステロイド合成系の転換機構を分子レベルで理解する上で不可欠となる各種ステロイド代謝酵素の遺伝子クローニングを行い、それらの酵素活性と各時期の生殖腺における発現を調べた。その結果、卵巣型のaromatase(P450arom A)と17β-hydroxysteroid dehydrogenaseタイプ1(17β-HSD 1)が雌から雄へ性転換する際に減少する一方、11β-hydroxylase(P45011β)が増加することから、P450arom Aと17β-HSD 1が卵巣におけるestroneとestradiol-17βの合成に、P45011βが精巣における11-ketotestosteroneの合成に関与しており、これらの発現調節により性転換の際のステロイド合成系の転換が起こると考えられた。
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